研究課題
A. オートタキシン阻害剤による膵癌細胞増殖抑制効果 ①膵癌増殖抑制効果の検証 (in vitro研究):膵癌細胞株を培養ディッシュにまき、PF-8380 投与・非投与環境下での増殖能について比較したところ、両群に有意な差は認めなかった。②膵癌細胞増殖抑制効果の検証 (in vivo研究):PF-8380を腹腔内に投与し、腫瘍の増大について経時変化を追ったところ、3週間の経時観察により、治療群で腫瘍増大抑制効果がみられた。B. オートタキシン阻害剤による膵癌細胞浸潤・転移抑制効果 ① 膵癌細胞浸潤抑制効果の検証:上記と同様にLPCから産生するLPA量が培地内では十分量ではないためか、in vitroでは有意な差が得られなかった。 ② 膵癌細胞転移抑制効果の検証:ルシフェラーゼ発現膵癌細胞株をマウスに移植。PF-8380投与 ・非投与群の2群に分け、イメージシステムを用いて追跡観察を行ったところ、3週間の経時観察の後、治療群では転移・播種巣の抑制が確認された。 C.オートタキシンの膵癌抗癌剤耐性獲得に関わる評価:In vitro実験ではPF-8380の効果が十分でないことが疑われたため、LPA存在・非存在下でのIC50の変化をまず確認した。すると、LPA存在下の方が抗癌剤感受性が低下していることがわかり、やはりLPAをターゲットとする意義が明らかとなった。本実験は現プロトコールではin vitroではなくin vivoの方が評価しやすいと判断された。興味深いことに、マウスへの腫瘍移植モデルを用いてGEM投与によるオートタキシンの発現の変化が確認でき、腫瘍の増大および抗癌剤投与治療によりオートタキシン活性が変化していることが確認できた。
3: やや遅れている
①In vitroではATX阻害薬の効果を検証することができなかった。理由としては、10%FBS存在下の実験であったため、LPCだけでなくLPAがすでに存在していることが原因と考えられた。 そのため、In vitroの実験系を一部変更しプロトコールを見直し、条件設定に時間を要している。②マウスへのPF-8380投与にあたり、投与によりマウスの体重減少が目立ち、経過中に死亡する例が散見された。逆に投与量が少ないと効果が得られなかったため、安全かつ効果が十分といえる投与量の設定に時間を要した。キットを用いてマウスの血中ATX活性値を測定して、投与量を決定した。③治療実験経過中、コントロール側のマウス数が死亡により減少したため、統計学的な有意な差には至らず、来年度に再度マウスの数を増やして再検を要している。
①プロトコールを一部改変して、昨年度行えなかったIn vitroの実験を遂行することと、昨年度行ったマウス実験をマウスの数をそろえて再度継続して行う。②31年度として実験計画した以下を行う。A.臨床検体を用いたオートタキシン・LPA受容体発現と臨床像に関する検証 膵癌患者血液中のオートタキシン濃度を測定する。さらに、超音波内視鏡下生検法(EUS-FNA)にて採取され、病理組織学的に膵癌と診断された病理検体を用いてオートタキシンおよびLPA受容体の免疫染色を行い、腫瘍内発現の検討を行う。外科切除が施行された症例では外科切除標本に対して免疫染色を行い、腫瘍内・および切除組織の周囲組織におけるオートタキシン・LPA 受容体発現について解析する。解析から得られた発現レベルと、臨床結果の関連性につき検討を行う。
実験の進行状況が遅れ、動物の購入などの購入予定も遅れているため。次年度にはプロトコールの見直しのうえ、遅れた実験を中心に繰り越し分を使用する計画である。
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