研究課題
膵癌は予後不良の難治癌である。定期的に人間ドックを受診しているにも関わらず、切除不能な膵癌が見つかることがあり、早期膵癌や膵発癌する受診者を正確に見つけることが重要である。このため、申請者らは、これまで、膵臓の前癌病変と言われる膵管内乳頭粘液腫瘍(IPMN)患者を対象に、膵癌を超早期に捕捉する技術の開発を試み、前向きに観察して来た。IPMN患者では、膵発癌のみではなく他臓器発癌(大腸癌、胃癌などの腺癌)の頻度が高いことが判明した。膵発癌に限らず、発癌するIPMN患者を発見することは有用である。発癌率が数%/年と高頻度であり、癌発見率(担癌比率)が0.3%と低い人間ドック受診者を対象にするよりも、医療経済的にも注目できる。なお、IPMN患者は、大阪市立大学単施設だけでも2014年5月から2019年3月までに980名以上登録され、決して稀な疾患ではなく (UMIN No. 17958)、膵癌有病率は11%と高値である。さて、エクソソームは、細胞が細胞間情報伝達物質として血液などに放出する。エクソソーム中のmiRNAを解析すると放出元の細胞の情報が明らかになる。また、エクソソーム中のmiRNAは比較的安定な状態で血中に存在する。血液から癌細胞由来のエクソソームを適切に分離することで超早期癌の診断ができる。IPMN患者では、膵発癌のみではなく他の消化管発癌(大腸癌、胃癌などの腺癌)の頻度が高いとされ、発癌するIPMN患者を発見するのに有効と考えられた。一方、ゲノム網羅的にメチル化解析では、腫瘍性病変で高頻度にメチル化し、正常や非腫瘍性病変では低頻度しかメチル化していない遺伝子がわかった。
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