研究課題
29年度は、動物モデルを用いた基礎的検討を終え、ヒト臨床検体の観察を中心に行った。動物モデルにおける基礎的検討は、LUCIDを用いた透明化処理による組織の形態破壊がないこと、免疫染色などの抗原性に変化がないこと、観察データの3D構築により腺管や血管の構造評価が可能になること、抽出した核酸データが保たれることなどを示し、これらの業績はPathology international誌(Pathol Int. 2018 Feb;68(2):102-108.)に発表した。また、この基礎的検討により得られた知見を踏まえて行われているヒト臨床検体での症例集積は、内視鏡的粘膜下層剥離術で切除した食道癌・胃癌(腺腫)・大腸癌(腺腫)を中心に、過去のパラフィンブロックに透明化処理を施して共焦点顕微鏡での観察を行った。さらに浸水レンズに対する自動注水システムの開発などにより長時間の連続撮影を可能にし、昨年度までは0.5x0.5mmの範囲までの観察であったところを今年度は3x30mm程度の広範囲観察ができるようになった。これらの成果は、日本消化管学会の第14回学術総会でその一部を発表(「胃腫瘍性病変の拡大内視鏡血管所見の病理学的検証における組織透明化技術有効性の検討」)した。さらに同演題は優秀演題として採択されてDigestion誌への投稿依頼があり、目下執筆中である。上記のような観察範囲の拡大により、内視鏡治療検体全体の評価も可能となったことから、30年度はヒト検体のデータ集積ペースが向上することが期待される。
2: おおむね順調に進展している
上記概要に記したように、論文化・学会発表も順調に行われており、またヒト検体での症例集積も順調に行われているため。
今後もヒト検体でのデータ集積を継続すると共に、デジタルデータの解析に際してその最適なソフトウエアの選定なども行っていく。
年度内の収集データ量が想定を下回り購入予定のネットワーク対応ストレージ購入を次年度に持ち越したため。
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Pathology International
巻: 68 ページ: 102-108
10.1111/pin.12627