ヒトの消化器がん細胞株16種類、ラット胃がん細胞株、ラット胃由来正常細胞株を用いてin vitro PDDを実施した。In vitro PDDは、1mM 5-ALA処理4時間後に各培養細胞を遠心にてペレット化し、LCTF顕微鏡で紫外光を照射し、蛍光強度を経時的に測定することで実施した。その結果、630nmと670nmに付近にピークのある分光スペクトルデータが得られた。ただし、臨床検体においては腫瘍組織周辺の繊維芽細胞などが多く含むコラーゲンが670nm付近に自家蛍光を持つことも報告されているため、コラーゲンの自家蛍光をカットするような工夫が必要であると思われる。そのため、今回用いた紫外光だけではなく、緑色光による励起できるシステムの開発を現在進めている。また、蛍光強度の強弱は単に細胞数だけに影響を受けるものではなく、細胞の体積にも影響を受けることを示唆するデータも得られており、詳細について現在検証中である。また消化器がん細胞株をマウスに移植し、作製した腫瘍を光感受性物質であるverteporfinを投与後に切除し、LCTFで観察することで690nm付近にピークのある分光スペクトルデータを得ることもできた。 臨床において、早期胃癌の14例に対して、ESD施行3時間前に、5-ALA内服を行い、胃腫瘍部と非腫瘍部で検体を取得し、PDDにおける蛍光スペクトラムを、LCTF顕微鏡を用いて測定した。その結果、photobleaching effectによって、630nmのピークが減衰し、670nmのピークが増強する効果を見積もった。さらに胃腫瘍においては、非腫瘍と比較して、630nmのピークが高い傾向が認められた。ただし、症例数についてはまだ十分とは言えないため、今後症例数を増やして更なる検証を行うことが必要である。
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