研究課題
本研究は鋸歯状腺癌のなかで予後不良な群の特徴を病理組織所見や内視鏡所見、ゲノム変異などから体系的に解明する研究である。前年度までの研究にて我々は癌での鋸歯状構造の有無が癌の悪性度と関連することを報告した。当該年度についてはゲノム変異について検討を行った。大腸癌における網羅的な研究の結果、大腸癌を3つのタイプに分けることができ、これらはCCS1=MSS, CCS2=MSI, CCS3=serrated pathwayに関連することを報告されている(Nat Med. 2013;19: 614-618.)、このため我々はこの分類を判定に重要なCDX2の免疫染色とMSI解析を早期鋸歯状腺癌の臨床病理学所見を比較することとした。当院で加療した早期鋸歯状腺癌24症例について、CDX2の免疫染色とMSI解析にて検討を行なった。さらに癌関連15遺伝子について次世代シークエンサーを用いたtarget-capture sequenceを行った。この結果、24症例はCDX2陽性、MSS群 14症例、MSI 5症例、CDX2陰性、MSS群 5症例に分類できた。MSSの早期鋸歯状腺癌ではCDX2陰性癌は陽性癌に比べて、有意にSM癌が多く、KI67 LIも高かった。このことからMSS癌のうちCDX2陰性癌はCDX2陽性癌と比べて悪性度が高いことが示唆された。さらにMSSのCDX2陰性癌やMSI癌ではMSSのCDX2陽性癌と比べては近位結腸癌が有意に多かった。またtarget-capture sequenceの結果、MSSの早期鋸歯状腺癌ではCDX2陰性癌は陽性癌に比べて、 KRASもしくはBRAFの変異が癌化によって蓄積する割合が有意に多く、これらの遺伝子の蓄積が悪性度と関連することが示唆された。以上のことをまとめ論文化した。
1: 当初の計画以上に進展している
概要に示したように、鋸歯状腺癌の悪性度の指標となるバイオマーカーを同定でき、論文化してまとめることができたため。
BRAFやKRASの蓄積が鋸歯状腺癌の悪性度に与える影響について機能解析を行う。
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PLoS One
巻: 14 ページ: e0211477
10.1371/journal.pone.0211477.