研究課題/領域番号 |
17K09479
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
内藤 格 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (30527750)
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研究分担者 |
吉田 道弘 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (20636328)
加藤 晃久 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 臨床研究医 (10803489)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 膵癌 / 化学療法 / EUSFNA / GnP療法 |
研究実績の概要 |
近年ではゲムシタビンとナノ化パクリタキセル併用療法(GnP療法)が切除不能膵癌に対する第一選択薬として使用される機会が増加している。しかしながら、GnP療法における効果予測マーカーは未だ同定されていない。他の癌腫においてはclassⅢβ-tubulin(TUBB3)がタキサン系薬剤の耐性と関与すると報告されており、膵癌においても関連が期待される。 当院及び関連施設において,超音波内視鏡下穿刺吸引(EUS-FNA)を施行した切除不能膵癌75例を対象とし、後ろ向きにFNA病理検体を用いたTUBB3の免疫染色を行い、腫瘍内発現を評価した。染色強度を4段階 (0: 陰性,1; 弱陽性,2; 中等度陽性,3; 強陽性) に分類し、陽性細胞の割合と組み合わせることで、TUBB3陰性もしくは陽性に分類した。また、TUBB3の発現とGnP療法の治療効果や無増悪生存期間(PFS)との関連性につき検討した。 GnP療法の効果判定やFNA検体の免疫染色が評価可能であった67例中、TUBB3の発現は陰性14例(21%)、陽性53例(79%)であった。RECIST判定に基づいた病勢制御率(DCR)は、TUBB3陰性群において有意に高値であった(100% vs. 64.2%; p=0.008)。またPFSもTUBB3陰性群において有意に延長した(7.1ヶ月 vs. 3.7ヶ月; log rank test, p=0.036)。PFSにおける多変量解析では、全身状態の指標であるperformance statusとTUBB3発現(hazard ratio, 2.41; p=0.026)が独立した関連因子であった。 切除不能膵癌に対するGnP療法において,EUS-FNA検体によるTUBB3の腫瘍内発現は治療効果予測因子として有用であり、今後の個別化治療に向けた重要な指標となり得る可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
EUS-FNA検体に対して、TUBB3の免疫染色は施行可能であったため、TUBB3の発現とGnP療法の治療効果や無増悪生存期間(PFS)との関連性につき検討を行い、病勢制御率(DCR)は、TUBB3陰性群において有意に高値であり、PFSもTUBB3陰性群において有意に延長し、PFSにおける多変量解析においても、TUBB3発現(hazard ratio, 2.41; p=0.026)が独立した関連因子であることが明らかとなった。 しかしながら、Human equilibrative nucleoside transporter (hENT1)染色は染色が安定せず、hENT1染色の解析ができていない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
hENT1染色を安定させ、今後EUSFNA検体のhENT1染色とTUBB3の発現との組み合わせと、GnP療法の治療効果やPFS、DCRとの関連性の検討を行う。また、GnP以外の化学療法症例におけるTUBB3の発現と各種化学療法の治療効果やPFS、DCRとの関連性についても検討を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は得られた結果に基づき、英語論文作成・投稿を行ったが、学会発表を行うことはできなかった。次年度は得られた結果で学会発表を行う予定である。
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