研究実績の概要 |
ボディマス指数で判定される肥満は小児においても心血管系及び代謝系障害の危険因子とされている. 一方, ボディマス指数が正常であるが体脂肪率が高い状態を「隠れ肥満」といい, 成人では肥満と同様, メタボリック症候群に関連するとされるが, 小児における知見は少ない. 本研究では, 1) 体脂肪率が高いほど小児におけるメタボリック症候群の頻度が増加する, 2) 小児「隠れ肥満」例は正常体格例と比較して心血管系及び代謝系障害の指標に異常を認める, という2つの仮説を検証することを目的としている. 本研究により「隠れ肥満」が心血管系及び代謝系障害に関連することが判明すれば, 検診体制の変更, 「隠れ肥満」例の健康に関する認識変更の啓発, 更には食事・運動・薬物療法の発展が期待される. 研究活動は, 研究代表者の所属施設を外来受診, あるいは検査目的で入院した症例を対象とし, 総合的身体測定 (ボディマス指数, 腹囲, 臀囲, 除脂肪体重, 体脂肪率)・生理学的検査・血液性化学検査 (尿酸, 中性脂肪, 高密度リポ蛋白コレステロール, 非高密度リポ蛋白コレステロール, インスリン抵抗性, 高感度C反応性蛋白)・断層超音波検査 (左心室拡張末期容積係数, 左心室心筋重量係数, 動脈コンプライアンス, Tei index, 頸動脈内膜中膜複合体厚) を施行している. 5年間に対象となった例は682例 (男345例) であった. 年齢は5-15歳 (中央値11.2歳) であった. 総合的身体測定結果より, 正常, 肥満, 隠れ肥満はそれぞれ580例 (男311例), 72例 (同23例), 30例 (同5例) であった. 隠れ肥満は全体の4.4%を占めた. 尿酸, 中性脂肪, 高密度リポ蛋白コレステロール, 非高密度リポ蛋白コレステロール, インスリン抵抗性, 高感度C反応蛋白, 左心室心筋重量係数, 頸動脈内膜中膜複合体厚は3群間で有意差 (危険率 <0.05) を示し, 尿酸と左室心筋重量係数は隠れ肥満例が正常例及び肥満例よりも高値を示した (危険率 >0.05).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
所属施設附属病院が多数の新型コロナウイルス感染症患者を受け入れていることから, 予定入院, 予定検査を減少しなければならない状況となっている. 特に第5波, そして更に増強した第6波の感染蔓延期には, この様な外的, 物理的な要因によって, 予定診療の遅れが入院に加え, 外来でも広く発生している. この様な状況のもと, 対象被験者数の増加が大きく伸び悩んだ.
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