研究実績の概要 |
ボディマス指数が正常であるが体脂肪率が高い状態を隠れ肥満といい, 成人では肥満と同様, メタボリック症候群に関連するとされるが, 小児における知見は少ない. 本研究では, 1) 体脂肪率が高いほど小児におけるメタボリック症候群の頻度が増加する, 2) 小児隠れ肥満例は正常体格例と比較して心血管系及び代謝系障害の指標に異常を認める, という2つの仮説を検証することを目的としている. 本研究により隠れ肥満が心血管系及び代謝系障害に関連することが判明すれば, 検診体制の変更, 隠れ肥満例の健康に関する認識変更の啓発, 更には食事・運動・薬物療法の発展が期待される. 研究活動は対象者において, 総合的身体測定 (ボディマス指数, 腹囲, 臀囲, 除脂肪体重, 体脂肪率)・生理学的検査・血液性化学検査 (尿酸, 中性脂肪, 高密度リポ蛋白コレステロール, 非高密度リポ蛋白コレステロール, インスリン抵抗性, 高感度C反応性蛋白)・断層超音波検査 (左心室拡張末期容積係数, 左心室心筋重量係数, 動脈コンプライアンス, Tei index, 頸動脈内膜中膜複合体厚) を施行している. 5年間に対象となった例は689例 (男348例) であった. 年齢は5-16歳 (中央値11.3歳) であった. 総合的身体測定結果より, 正常, 肥満, 隠れ肥満はそれぞれ587例 (男314例), 72例 (同23例), 30例 (同5例) であった. 隠れ肥満は全体の4.4%を占めた. 尿酸, 中性脂肪, 高密度リポ蛋白コレステロール, 非高密度リポ蛋白コレステロール, インスリン抵抗性, 高感度C反応蛋白, 左心室心筋重量係数, 頸動脈内膜中膜複合体厚は3群間で有意差 (危険率 <0.05) を示し, 尿酸と左室心筋重量係数は隠れ肥満例が正常例及び肥満例よりも高値を示した (危険率 >0.05).
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