研究実績の概要 |
全身性アミロイドーシスの治療後の長期にわたる心機能変化と予後に与える影響の評価に関して研究を行った。原発性(AL)アミロイドーシスにおける心病変の存在は、予後不良を示唆するが、長期にわたる心エコーによる経過を観察した研究は存在しない。心病変の退縮が適切な治療後にどの程度生ずるかを検討した。ALアミロイドーシス126名のうち、治療後に経過観察できた患者94名を対象とした。経過観察期間平均値は1500日ほどで、左室壁厚や心エコー指標を経時的に経過観察した。30%の患者で左室病変の退縮を認め、37%は経過中不変、33%は心病変の進行を認めた(AHA2017 Anaheimで発表). ALアミロイドーシスの患者の予後を規定する心エコー指標を検討した。126名中、43名が経過中死亡した。単変量解析では、diastolic wall strain (DWS), mid-wall shortening (MWS), global longitudinal strain (GLS), e', BNP, 心拍数が予後予測因子であった。多変量解析では、DWS, e', BNP, 心拍数が予後の独立規定因子であった(AHA2017 Anaheim) 。バイオマーカーである、h-ANP, BNP値の組み合わせて心機能予測する。h-ANP, BNP共に高値軍はDWSが他の群に比し、低値であった。僧帽弁血流速パターン,PVF S/D比、E-e', GLSは他群と比し異常値を呈した(AHA2017 Anaheim)。家族性アミロイドーシス96名を経時的に観察した研究では10%の患者が治療後心病変の退縮を示したのに対し、49%は不変、41%で進行を示した(AHA2018 Chicago)。ALアミロイドーシスでは、治療により心病変が停止する症例は予後良好であった(ESC Asia Singapore)。
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