研究課題
我々の研究は、虚血性心疾患患者に対して、血管内超音波による冠動脈プラーク組成を中心として、それが心肺機能と関連するかどうか、また予後にどのような影響を及ぼすかも検討しているところである。昨年度に得られた結果としては、136名の血行再建が成功した急性心筋梗塞患者(平均年齢65歳)に対してその入院中に心肺機能(CPX)を行った検討を報告した。VO2 12以下を低運動耐容能群と定義し、それを超える患者と臨床経過を比較検討した。38名(28%)の患者が低運動耐容能群であった。患者背景を見たところ、これら低心肺機能群の患者では、そうでない群と比較して、高血圧症や、慢性腎臓病を有意に多く持っていた。研究機関開始から、最長2年間の予後調査を行ったところ、全死亡、心筋梗塞再発、心不全による入院の複合エンドポイントにおいて、イベント発生率が、低心肺機能群において有意に高い(15.8% vs. 1.0%, log-lank test P< 0.001)結果であった。加えて、初回血行再建直後に行った心エコーによる解析において、E/e’ が低運動耐容能群を規定する因子ということも明らかとなった(OR 1.19,95% CI 1.09-1.31, p < 0.001)。なお、昨年度一年間には、一昨年度に加え、新たに90症例の血管内超音波解析を行うことができた。これらの患者に対して、心肺機能の他に、握力なども評価をしており、これらの関連を含めた解析を行い、心血管イベントについての関連につき、検討を引き続き行う。
2: おおむね順調に進展している
血行再建が成功した急性心筋梗塞の患者では、心肺機能により予後が違うことが明らかとなった。心臓リハビリテーションなどで、心肺機能改善により予後改善するのではないかということが示唆される。更に、冠動脈プラークとの関連を検討する必要がある。
平成31年度(令和元年度)には、症例数を増やすことにより、データーの信頼性を高めることができた。PCI治療の際に、血管内超音波等の所見を用いて、冠動脈プラーク組成を確認したが、運動習慣とCPX等によるパラメーターとの関連性についての検討を進めるとともに、予後解析、またリハビリテーション介入により心肺機能が改善した際の予後改善効果について評価する。
新コロナウイルスの影響により、解析が遅れたが、栄養状態も含めて新たな解析を開始した。これらの論文作成、成果発表のために助成金を使用する。
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Heart and Vessels
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DOI: 10.1007/s00380-020-01576-2