研究実績の概要 |
先天性QT延長症候群の主要な5つの責任遺伝子(KCNQ1:LQT1, KCNH2:LTQ2, SCN5A:LQT3, KCNE1:LQT5, KCNE2:LQT6)に変異を認めなかった31症例の薬剤性QT延長症候群に対して、上記以外で遺伝子変異の同定頻度が少ない責任遺伝子や薬剤代謝に関与するCYP関連遺伝子における計34の候補遺伝子のターゲットシークエンスを実施した。同定されたアミノ酸の変化を伴うnonsynonymousなvariantsは、日本人ゲノム多様性統合データベース(TogoVar)あるいはgenome aggregation database (GnomAD)と比較検討した。QT延長症候群の責任遺伝子に関する多施設国際共同研究では,CALM遺伝子の病原性に関するエビデンスを報告しているが、今回のコホートにはCALM1-3にエクソン内の変異を認めなかった。また、病原性の証拠が希薄であることが報告されているSNTA1とCAV3においても、正常コホートに同定されていないvariantは認めなかった。QT延長症候群の責任遺伝子に関する多施設国際共同研究ではAKAP9, ANK2, CAV3, KCNE1, KCNE2, KCNJ2, KCNJ5, SCN4B, SNTA1の責任遺伝子としての位置づけはさらに検証が必要とされており、今回我々のコホートで見いだされた既知のvariantsにおいても、薬剤性QT延長症候群の病原性を説明しうるものか慎重な検証が必要であると考えられた。CYP関連の遺伝子多型に関して、TogoVarもしくはGnomADの正常コホートにおけるアレル頻度と比較し、薬剤性QT延長症候群で同定頻度の高い多型は認められなかった。
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