研究課題
本研究の目的は、循環器疾患における腸内細菌叢の役割を解明し、疾患の発症予測・治療介入に利用するための研究基盤を確立することである。 臨床研究から見出した、冠動脈疾患(動脈硬化)の予防に関連する可能性のある腸内細菌種 (Bacteroides vulgatesとBacteroides dorei)を同定し、動物実験においての動脈硬化抑制効果を証明し、その作用機序の解明を進めて論文報告、特許出願に至っている。このBacteroides2菌種を用いた治療法として、微生物製剤としての可能性と、ある食品成分摂取で本2菌種を増加させるような一種のプレバイオティックスの使用が想定できる。両者の可能性を追究しながら、研究を推進しており、後者に関しての研究成果を論文発表した。心不全に関連する腸内細菌叢とその代謝産物の探索研究についても進めており、その一部のデータを解析した結果を用いて1本目の論文を発表した。心不全患者について、悪化した入院時(非代償期)と治療後の代償期の2ポイントで解析を行ったことで、同一の患者での腸内細菌叢と血中代謝物の変化も捉えることができて、当初の予定より幅の広い解析も行うことができた。さらに、同サンプルを用いて、文部科学省科学研究費助成事業「先進ゲノム支援」からのサポートにて「ショットガンシーケンスによる腸内細菌メタゲノム解析」を追加実施し、全腸内細菌の遺伝子情報を得ており、現在病態や代謝物との関連を解析中である。
1: 当初の計画以上に進展している
冠動脈疾患(動脈硬化)の研究に関しては、その予防に関連する可能性のある腸内細菌種Bacteroides vulgatesとBacteroides dorei菌を同定して、動物実験での動脈硬化抑制作用を証明して論文報告を行った。この成果は、研究分担者が、AMEDから研究資金を獲得し、臨床応用に向けた研究に発展している。また、その菌自体を利用した治療介入の有用性と作用機序の解明を進めており、企業と協力して、特許PCT出願にまで至っている。従って、研究の進展は予想よりも進展が早いといえる。心不全に関連する研究でも、腸内細菌叢とその代謝産物の探索研究にて、1つ目の論文を報告したが、さらに、文部科学省科学研究費助成事業「先進ゲノム支援」からのサポートを得て「ショットガンシーケ ンスによる腸内細菌メタゲノム解析」を進めた。より詳細な解析結果を得ており、今までの研究成果の検証とより詳細な解析で腸内細菌の機能遺伝子レベルの解析を含めて実施している。 これも追加サポートによって、当初の計画より進展している。
動脈硬化予防菌としてのBacteroides vulgatesとBacteroides dorei菌の研究は、別予算の研究費にて実施し、より発展性のある基礎・臨床応用に繋げる。次年度は、本来の本研究計画の最終目的であった、「循環器疾患治療のために、腸内細菌叢への介入法を臨床応用のための研究基盤を確立する」取り組みを中心に展開し、新たな介入法候補の提案を目指す。特に、心不全関連研究については、病態に関連する可能性のある腸内細菌種を数種類同定しており、一連の研究成果を、臨床現場で利用可能な「循環器疾患の発症予測法や予防法」の開発につなげるための研究基盤の確立を目指す。
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