研究課題/領域番号 |
17K09502
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
北川 知郎 広島大学, 病院(医), 助教 (70633709)
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研究分担者 |
木原 康樹 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 教授 (40214853)
山本 秀也 広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 准教授 (70335678)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心外膜下脂肪 / 分子イメージング / 冠動脈硬化症 |
研究実績の概要 |
平成29年度末までに、約70例の心臓手術症例において、術前の心臓画像評価と術中の心外膜下脂肪組織(EAT)の採取および固定を行い、各症例の基本情報をデータベース化している。これらの症例において、免疫染色およびリアルタイムPCR法によるEATの分子生物学的解析を進め、臨床画像所見との比較検討を行っている。今年度得られた知見として、EATにおいて炎症性サイトカインTNF-αの発現が亢進しており、心臓CTにて検出される非石灰化成分を含む冠動脈プラークと有意に相関していることを見出した。この成果を論文として英文誌へ投稿し、受理、掲載された(Journal of Atherosclerosis and Thrombosis)。免疫染色やその他の炎症サイトカイン(IL-1β, MCP-1など)についても、その発現と臨床的な冠動脈硬化進展との関連性を検討中である。一方、解析項目としていた抗オステオカルシン抗体(石灰化促進因子)によるEATの免疫染色では有意な染色性を確認できなかった。 血管分子イメージングに関する検討については、18F-フッ化ナトリウム(NaF)を用いたPETのデータを集積中である。これまでに、冠動脈CT上の混合性冠動脈プラーク(石灰化、非石灰化成分が混在する冠動脈粥腫)や脆弱な冠動脈プラークにおいて、18F-NaFの集積が有意に亢進していることを見出した。この結果より、18F-NaF PETによる分子イメージングが冠動脈硬化症のリスク評価に活用できる可能性が示唆され、この結果を論文として英文誌2誌に報告した(Atherosclerosis, Data in Brief)。18F-FPPRGD2についてはトレーサーの精製に至っておらず、今後の方針について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例数は当初予定してた数に到達していないが、臨床画像および分子生物学的データの蓄積は比較的順調と考えている。学会や文献での報告も随時行えている。一方、予定していた一部の免疫染色や新規バイオトレーサーに関する検討では有意な結果が得られておらず、手法の変更を含めて再考していくことを考慮している。
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今後の研究の推進方策 |
症例登録および組織検体の採取については、目標数への到達を目指す。現行の解析を進めるとともに、心外膜下脂肪におけるその他の炎症サイトカイン(IL-1β, MCP-1など)についても、その発現と臨床的な冠動脈硬化進展との関連性を検討していく。抗オステオカルシン抗体、抗αvβ3抗体などについては、適切な抗体試薬の選定を検討していく。 分子イメージング研究については、冠動脈CTおよび18F-NaF PETを用いたリスク予測モデルの構築を目指し、検討を進めていく。18F-FPPRGD2については、トレーサー精製方法等について協力機関と検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
組織検体の技術処理(免疫染色、PCRなど)に人件費を計上していたが、予算を使用することなく施行可能となったため、検体保存用のフリーザー等の物品購入に充てたところ、残額が生じた。次年度においては、組織検体処理のための人件費に50万円、実験用の消耗品(スライドガラス、ピペットなど)購入費および他施設での情報収集費用(移動費)として30万円、学会発表旅費に20万円使用予定である。
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