研究課題
1)高血圧自然発症ラットを用いた実験により、高血圧の進展過程で血管周囲マクファージの集積が生じており、視床下部を中心とした炎症性変化による中枢性交感神経出力増加が血圧上昇の程度を増強していることを見出した。視床下部交感神経中枢の神経細胞活性化をFos蛋白発現により確認した。また、クロドロン酸リポゾームの脳内投与によって血管周囲マクロファージを除去すると昇圧の程度は抑制された結果も上記の仮設を支持するものである。2)慢性腎臓病マウスにおいて中枢性交感神経活性化が生じており、腎除神経によって降圧すること、アンジオテンシン受容体拮抗薬投与下でも、腎除神経の効果は認められた。その機序としてアルドステロン抑制作用の関与を示唆する成績を得た。3)炎症性変化を伴うとされる妊娠高血圧発症モデルで食塩感受性獲得が関与していることを示唆する成績を得た。この機序として視床下部神経活動活性化およびバゾプレシン放出増加を示唆する成績を得た。4)低酸素に伴う肺高血圧症モデルマウスで骨髄由来マクロファージの低酸素誘導因子を除去すると肺高血圧の進展が抑制されることを見出した。この因子が肺高血圧治療の標的となる可能性が示唆された。5)高血圧や心不全患者における血管内皮機能や炎症性変化を調べるための予備観察研究を開始した。血流依存性血管拡張反応(FMD)検査によって血管内皮機能を安定して測定できること、血圧コントロール状態が不良な地域住民が多く、内皮機能障害やBNP経度増加が生じていることを見出している。
2: おおむね順調に進展している
高血圧における自律神経系や免疫・炎症系の役割、血圧上昇機序、脳・心臓・腎臓との連関などの解明が進んでいるため。
現在進行している研究成果を論文作成し最終受理されるようプロトコールを検討し実験を行う。特に、論文査読結果から必要と考えられる追加実験や解析について留意して研究を遂行する。その結果を踏まえ、適切に論文を改訂し掲載へ向けて研究を進めていく。基礎研究における成果を臨床での診断・治療へ結びつけるため、すでに一部開始した臨床観察研究の結果を患者背景と血液検査・血管内皮機能検査値などと合わせて基礎データとしてまとめていく。それらの成果により、今後の解析に重要な項目を絞っていく。
消耗品の一部の定価と購入価格に差が生じたこと、また、一部の物品(特に薬品や抗体など)については次年度購入したほうが管理や保存の上で適切と判断したため。
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