研究実績の概要 |
本研究は先天性心疾患の中で最も重症である機能的単心室症に対するFontan手術後症例に、肺血管拡張薬の効果を検討する研究を予定していた。当初肺血管拡張薬の有用性の有無を考えていたが、心臓カテーテル検査時に一酸化窒素負荷試験では思わしい結果が得られなかった。心臓カテーテル検査時に酸素負荷試験では、経鼻酸素投与2L/minで急性効果が得られた。つまり、酸素飽和度の改善を認めるのみならず、中心静脈圧の低下も認めた。急性効果ではあるが、Fontan手術後遠隔期の予後不良因子である「低酸素血症」と「中心静脈圧上昇」の2つを一つの治療で改善できる可能性を示すことができた。 以下に研究結果の一部を記載する。 62名のFontan手術後症例に対して、心臓カテーテル検査時に5分間の経鼻酸素2L/minの投与を行い、投与前後での酸素飽和度及び血行動態の評価を行なった。患者の平均年齢は30歳、男:女=37:25、Fontan手術施行年齢6歳、Fontan手術後23年。原疾患は三尖弁閉鎖20名、両大血管右室起始19名、僧帽弁閉鎖5名、肺動脈閉鎖4名、両側房室弁左室流入3名、房室中隔欠損症2名、修正大血管転位症2名、その他の右室型単心室7名。Heterotaxy17名(無脾症10名、多脾症7名)。Fontan手術の型:心外道管法42名、ラテラルトンネル法20名。NYHA分類:I:31名、II:25名、III:6名。SpO2: 93.3%, CVP: 12mmHg, PAP: 10mmHg, PCWP: 7mmHg。酸素負荷: SpO2: 93.3%→97.5%(p<0.0001), CVP: 12mmHg→10mmHg(p<0.0001)。 上記の研究結果は、現在解析を行なっており、今後結果を論文にて報告する準備を行なっている。
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