Fabry病が疑われた症例の血漿中酵素活性は正常であったが、白血球中酵素活性は低下している症例におけるα-gal A遺伝子変異は、一塩基置換されたもので、この置換により異なるアミノ酸となるミスセンス変異であった。この変異をα-gal A-mutと名付け、レンチウイルスベクターを用いてα-gal Aとα-gal A-mutをHeLa細胞で過剰発現させ、in vitroで同様の現象が観察されるか確認した。その結果、培養上清中では、α-gal A酵素活性はα-gal Aおよびα-gal A-mutともに上昇していたが、白血球中つまり細胞内のα-gal A酵素活性はα-gal Aでは上昇していたが、α-gal A-mutでは上昇せず、臨床的に起きている事象を再現することができた。α-gal A-mutでの変異は先述したようにアミノ酸の置換が起こるミスセンス変異であったが、アミノ酸は中性から酸性アミノ酸へ置換されている。このアミノ酸置換が塩基性アミノ酸に置換された場合(α-gal A-mut2)やα-gal A-mutとは違う酸性アミノ酸への置換(α-gal A-mut3)では、血漿中や細胞内でのα-gal A酵素活性はどうなるか不明であり、α-gal A酵素の動態を確認するため、α-gal A-mut2およびα-gal A-mut3変異体のレンチウイルスベクターの作製を行った。このベクターでのin vitro実験では、酸性アミノ酸への変異では同様の現象が確認されたが、塩基性アミノ酸への置換では認められなかった。
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