①慢性心不全における肝機能検査の意義:慢性心不全における肝機能障害は珍しいものではないが、特にコリンエステラーゼ値とγGTP値はうっ血および生命予後の強力な予測因子であることを報告した。 ②慢性心不全における6か月後の腎機能悪化と血行動態の関係について:慢性心不全患者における6か月後の腎機能悪化は心臓死及び心臓死+心不全悪化の独立した予測因子であったが、ベースラインでの血行動態においては肺動脈圧、肺動脈楔入圧、右房圧が6か月後の腎機能悪化を規定する因子であったが、心拍出量は腎機能悪化を予測する因子ではなかった。多変量解析で右房圧は独立した慢性心不全患者における腎機能悪化の予測因子であることが示唆され、うっ血解除の重症性が改めて認識された。 しかしながら、身体所見や心エコー、血液検査といった、非侵襲性(もしくは低侵襲性)検査では、その評価は限界があることも示唆れれた。 ②そこで、本研究の目的である、生体インピーダンス法による非侵襲的体液貯留評価を行った。研究期間中、500名の被検者において、測定することができた。うっ血の指標とされている、B型ナトリウム利尿ペプチド、心エコーでの下大静脈径、推定肺動脈圧、僧帽弁流入血流波形によるE波、E/A、E波の減速時間とは、生体インピーダンス法で求めることができる細胞外液量と健常な状態で予測される細胞外液量の比(M/P ratio of ECW)はラフな相関関係を認めた。しかしながら、M/P ratio of ECWは、心臓死および心不全再入院の複合エンドポイントにおける独立した予測因子であることが判明した。この点に関して、従来の指標ではとらえられることができないうっ血を反映しているのか、うっ血以外の要素がM/P ratio of ECWに関与しているのかについて、現在検討を行っている。
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