研究課題
本学岩手医科大学は、平成23 年度より独自に被災地住民の健康調査を行い、それを発展させた形で、「東日本大震災被災者の健康状態等に関する調査研究」(厚生労働省科学研究費補助金事業)を行っている。これにより、10,374人の岩手県沿岸地域住民コホ-ト(一次コホ-ト)を対象として、平成23 年度に安静時12 誘導心電図、血液、尿検査、生活習慣などの聞き取り調査をすでに済ませている。さらに、年に一度同様の調査、測定を行うことで、対象コホートが追跡されている。平成30年度は、参加者の安静時12 誘導心電図についてミネソタ基準に準じたコード化とPQ、QRS 電位の計測を行い、次にデータのダブル・チェック作業を行い、最終的に本コホート研究参加者10,374 名全例のデータベース作成を終了した。また、40歳以上の心血管病非既往者において男女間でミネソタ・コードに基づく心電図異常の罹患頻度に差があること、異常Q波、高振幅R波、ST-T異常、房室伝導障害、不整脈は、心血管病発症危険に関連する傾向があること、左室肥大所見は高血圧のみならず、非高血圧においても心血管病発症危険に関連すること、左室肥大所見合併高血圧罹患者において、尿中アルブミンが心血管病発症危険に関連することを見出した。これらの基礎知見を基に、本研究のテーマである経年的ECG変化(心房細動、左室肥大、ST-T変化などの新規出現)とベースライン因子との関連性について、今後明らかにしていく。
3: やや遅れている
当初の研究計画として、平成30,31年度に解読作業を終了した12 誘導心電図データを「東日本大震災被災者の健康状態等に関する調査研究」のデータベースへ組み入れて、各12 誘導心電図指標および血圧や糖・脂質代謝指標、喫煙などの生活習慣といった従来の危険因子と心房細動などの不整脈、左室肥大、虚血性心疾患といった12 誘導心電図異常の新規出現との関連について縦断解析を行う、としていた。すでにECG解読作業を終了し、データセット作成が完了した。しかし、現在まだデータ・クリーニング段階にあり、経年的12 誘導心電図変化(心房細動、左室肥大、ST-T変化などの新規出現)とベースライン因子との関連性に関する解析には至っていない。
研究開始時の平成23年度の一次コホートと平成24-28 年度の重複コホートの12 誘導心電図データを「東日本大震災被災者の健康状態等に関する調査研究」のデータベースへ組み入れる。統計ソフト (SPSS)を用いて、12 誘導心電図指標および血圧や糖・脂質代謝指標、喫煙などの生活習慣といった従来の危険因子と循環器疾患発症との縦断解析を行う。さらに、重複コホートの心房細動などの不整脈、左室肥大、虚血性心疾患の新規出現に関連する因子について縦断解析を行う。これは、研究代表者 (田中)により行う。本研究が当初計画どおりに進まない可能性として、解析者間の12 誘導心電図のコーディングや計測値のばらつきによるデータ解析精度の低下、が懸念されたが、一検体の12 誘導心電図の解析を2名によって行うことを原則とし、計測データの乖離については解析者間で申し合わせの上最終的なデータとすることで、データの精度確保が可能になった。平成31年度は、12 誘導心電図データのコホート研究データベースへの突合せによる解析データセットの解析と解釈、知見の考察を行い、研究成果を公表する。
本研究のテーマである経年的12 誘導心電図変化(心房細動、左室肥大、ST-T変化などの新規出現)とベースライン因子との関連性の解析を行う予定であったが、データベース作成が予定より遅延したため、解析を進められず、解析ソフトの購入を行わなかった。よって、残額が生じてしまう結果となった。
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