研究実績の概要 |
1. 本研究は、研究参加者10,374名の12 誘導心電図(ECG) をミネソタ基準に準じてコード化し、ECG 指標を本コホート集団の追跡用データベースに組み入れることにより、各ECG 指標と循環器疾患発症との関連を明らかにすることを目的としている。統計ソフト (SPSS)を用いて、各左室肥大(ECG-LVH)指標および血圧や糖・脂質代謝指標、喫煙などの生活習慣といった従来の危険因子と循環器疾患発症との関連について縦断解析を行った。 2. 心電図の左室肥大(ECG-LVH)を、以下の3つの基準に準拠し定義した。1) Sokolow Lyon voltage (SV1 + RV5/V6)≧3.8mV; 2) Cornell voltage (SV3 + RaVL)≧2.8mV (男性), 2.0mV (女性); 3) Cornell voltage product [Cornell voltage (+ 0.8mV,女性) × QRS]≧244mVms。 3. 平均11.3年の追跡期間に、1,886名(26.2%)に脳卒中および心筋梗塞、内因性急性死、心不全が発症した。いずれかのECG-LVHの指標を有する慢性腎臓病(CKD)患者で、これらの複合アウトカムのリスクが有意に増加した(ハザード比 1.47, p=0.002)。一方で、この関連は非CKD患者ではみられなかった(ハザード比 1.15, p=0.210)。ECG-LVHを有するCKD患者の心血管リスク増加は、年齢、性とは独立しており、既知の心血管リスク因子である高血圧や糖尿病の非併存群においても依然有意であった。ECG-LVHの指標を古典的心血管リスクモデルに加えることで、心血管リスク分類の精度が有意に増加した (net reclassification improvement=0.13-0.32,p<0.040).
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