研究課題
背景と目的:慢性腎臓病(CKD)と左室肥大(LVH)はしばしば併発し、それぞれCVD発症に密接に関連することが知られている。一方、CKDにおいて、ECGによって診断されたLVH(ECG-LVH)とCVD発症リスクとの関連についてこれまで一貫した報告はない。方法:2002-2004年に岩手県北・沿岸の17市町村 (現12市町村)が実施する健康診査を受診した26,469人を対象として、死亡、脳卒中・心筋梗塞・心不全罹患をエンドポイントとして、平均8.3年の追跡調査を実施した。このうち、ECGが記録された参加者7,322名のうち虚血性心疾患、脳卒中の既往例 データ欠損例を除いた40歳以上の7,206名(CKD:1,886名、non-CKD: 5,320名)を対象に、ミネソタ基準に準じたコード化とPQ、QRS 電位の計測を行い、心房細動などの不整脈、左室肥大を同定した。統計ソフト (SPSS)を用いて、各ECG-LVH 指標および血圧や糖・脂質代謝指標、喫煙などの生活習慣といった従来の危険因子と循環器疾患発症との縦断解析をCKDとnon-CKD別に行った。平均9.8年の追跡調査期間内に679名(9.4%)がCVDを発症した。非CKDにおいてはECG-LVHとCVD発症との間に有意な関連は認めなかった一方で、CKDにおいてECG-LVHはCVD発症に有意に関連した。この関連は、年齢、性別、血圧などの従来の危険因子とは独立していた。Net reclassification index上糸球体ろ過量やアルブミン尿といった古典的危険因子にECG‐LVH指標を加えた評価がCVD発症リスクの再分類の向上に関連した。よって、CKDにおいてECG‐LVHがCVD発症の特定に有用であり、さらに古典的な危険因子に追加することにより、リスク識別能を改善させる有用な指標であることが明らかになった。
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