研究実績の概要 |
本研究の目的は、当教室で開発をすすめてきたマルチセンサー多機能血圧計を用いた診察室外血圧の集約的管理である。本血圧計は、気温、気圧といった環境要因に加え、アクチグラフィーを用いた身体活動度が血圧測定とあわせて同時に測定可能となっている。今年度は、心不全の患者を対象にし、急性心不全治療急性期と慢性期に本血圧計を施行し、心機能の改善の程度と身体活動度に対する血圧の変化(アクチセンシティビティー)との関連を検討した。20名の心不全患者において、急性心不全治療直後(ベースライン)と標準的治療が行われた6~12か月後(フォローアップ)に、本血圧計を施行した症例を対象にした。20名の症例を、ベースラインと比較しフォローアップ時に左室駆出率が10%以上改善した群を左室機能改善群 (n=11)と左室機能非改善群(n=9)に分類した。改善群においては、24時間平均及び夜間拡張期血圧が、ベースライン時に比べてフォローアップ時に低下した。非改善群でのこの関係は認めなかった。改善群では、アクチセンシティビティーの程度は、ベースライン時に比べてフォローアップ時で上昇する傾向をみとめたが(1.0±3.5 vs. 4.5±3.5, P=0.065)、非改善群では認めなかった(3.2±5.4 vs. 2.0±6.3, P=0.479)。全体集団においては、アクチセンシティビティーの変化と左室駆出率の変化は有意な関連を認めた(r=0.553, P=0.011)。アクチセンシティビティーの改善は、心不全患者の血行動態の改善を示唆する。
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