研究課題
急性非代償性心不全(acute decompensated heart failure: ADHF)患者の約半数に合併し再入院や予後悪化因子である中枢性睡眠時無呼吸(central sleep apnea: CSA)では陽圧呼吸療法に変わる治療が求められている。CSAの発生・増悪に体液貯留や就寝時臥位の姿勢による下肢から上半身への体液の再分布(体液シフト)が関与する。ADHFにおいて、体液貯留、終夜体液シフトの制御に対する特異的アプローチによって、体液貯留・終夜体液シフトの是正、血中CO2レベルの上昇などを介してCSAの重症度が軽減できるか否かを解明することを目的として、下記の介入試験を計画し実施した。1)ADHF・CSA患者に対する減塩強化に関する無作為化試験:ADHF入院患者のうち、睡眠ポリグラフ(PSG)検査および体液シフト量測定が可能であった症例を対象とした。初期治療による状態安定後にベースラインのPSG検査、終夜体液シフト量の測定、経皮CO2モニタリングなどの各評価を行い、ベースラインPSG検査でCSAと診断された症例を通常減塩食(食塩6g/日)継続群と強化減塩食(食塩3g/日)群に無作為化に割付し4日後にベースラインで行った検査・測定・データ収集を反復した。現在までに7例を組み入れた。2)ADHF・CSA患者に対する下肢弾性ストッキング(compression stocking: CS) 着用に関する無作為化試験:ADHF入院患者で退院前にCSAが確認されている症例を対象にして、退院前の段階で、退院後の日中にCSを着用する群と着用しない群に無作為化しフォローアップ評価を行う研究であるが、特定臨床研究には該当しないが臨床研究法施行に関連した確認作業などにより倫理委員会への申請が遅れた。研究計画書は完成しているので早期に倫理申請し研究を開始する予定である。
3: やや遅れている
経皮CO2モニタリング装置がちょうど新機種へ移行期であり新機種を購入したが、睡眠ポリグラフ検査システムとの同期設定に難渋し時間を要した。強化減塩食(3g/日)への不満を少しでも軽減するために栄養部と相談し味付けや成分調整を行った。これらにより研究開始に若干の遅延を生じた。下肢弾性ストッキング着用に関する無作為化試験の開始遅延に関しては、平成30年4月からの臨床研究法施行に伴い施行前に承認された臨床研究に関しても見直しを求められる可能性が高いということで、特定臨床研究に該当葉しない研究ではあるが、ああえて倫理委員会承認を施行前には行わずに計画を十分に検討することとしたことが影響している。
経皮CO2モニタリング装置は新機種と睡眠ポリグラフ検査システムとの同期設定が完了し、強化減塩食の調整も終了したため、症例の組み入れが加速しているが、当初の予定を半年ずらして研究を進める。具体的には、平成30年度で減塩強化に関する無作為化試験について予定数の2/3の組み入れを目指す。下肢弾性ストッキング着用に関する無作為化試験は計10から15例を組み入れる。
研究全体の進捗の遅れに伴い消耗品などにかかるはずであった経費分が一部未使用となったことが次年度使用額となった理由である。次年度において、今年度遅れた分の組み入れ症例の検査などにかかる費用として使用する予定である。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
International Heart Journal
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Canadian Journal of Cardiology