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2017 年度 実施状況報告書

左心耳周囲脂肪の炎症が左房由来心房細動に与える影響

研究課題

研究課題/領域番号 17K09529
研究機関順天堂大学

研究代表者

山本 平  順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (70301504)

研究分担者 松下 訓  順天堂大学, 医学部, 准教授 (20407315)
嶋田 晶江  順天堂大学, 医学部, 助手 (20439326)
研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2021-03-31
キーワード心臓手術 / 糖尿病 / 脂肪 / 炎症
研究実績の概要

当院において開心術を受けた成人症例のうち、同意が得られた症例を対象とした。手術に得られた左心耳周囲の脂肪をPCRにて解析すると共に、術前の患者背景および術後転帰を参照した。患者を糖尿病の有無(現在治療中のものも含む)で分け、評価項目を比較検討した。
95例の解析を行った。うち非糖尿病群(nDM)70例、糖尿病群(DM群)25例であった。年齢はnDM=67.1, DM=69.0, p=0.363、女性の割合nDM=25 (35.7%), DM=8 (32.0%), P=0.738とこれらに有意差はなかった。平均BMI:、高血圧の合併、脂質異常症の合併はいずれもDM群で有意に多かった。術前の腎機能や透析の有無に差は見られなかった。術前の血液データでは白血球数が有意に多かったが、CRPに差は無く、また肝機能、腎機能にも有意差は見られなかった。脂質プロファイルはTG、LDL、L/H比とHDLコレステロールのみDM群で低値であった。行った手術ではCABGがDM群で有意に多く疾患背景を反映しているものと考えられた。また術前心房細動の有病率に差は無かった。
左心耳周囲の脂肪組織の遺伝子発現の比較検討において、炎症性サイトカインであるIL-1βの発現はDM群で有意に高かった。一方でその他の炎症性サイトカインであるIL-2、IL-6、TNFαには有意差は見られなかった。ミトコンドリア関連遺伝子であるNRF1、PGC1α、NDUFB8、ND6とも有意差は認めなかったなお術後心房細動(一過性のものを含む)の発生率には差は認めず、ICU滞在日数にも差は認めなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

開心術症例において脂肪組織の収集はほぼ予定通り収集できている。脂肪組織からのRNA抽出およびcDNAの作成も、一部の組織で抽出量が十分でないものも認めたがほとんどの組織で良好に抽出できた。またプライマーもプライマーダイマーを構成するものや、増幅が不良などのものは再度デザインし、これまでのところほとんど遺伝子において良好な増幅効果が得られている。
手術中における脂肪サンプル採取においても、手技による有害事象は認めておらず、上記のようにほとんどの組織で十分なRNAが得られており採取組織量も現在のもので十分であると考えている。一方で解析結果は予想に反して炎症サイトカインの遺伝子発現およびミトコンドリア関連遺伝子の発現にこれまでのところ有意差はみられていない。これまでの発現の値から推測するに、今後症例を増やしても有意差はないものと考えられる。この点が今後の検討課題となる。

今後の研究の推進方策

上記のように本年の検討では炎症性サイトカインの発現はIL-1βのみDM群にて有意な上昇を認めたもののその他の炎症性サイトカインはDM群で高い傾向は認めたものの有意差は得られなかった。またミトコンドリア関連遺伝子の発現にはほとんど差は無かった。
本検討では疾患背景が虚血性心疾患、大動脈弁膜症、僧帽弁膜症が混在しており、さらに男女差は術前の心不全の状態など様々な背景因子が存在している。これまでの検討では術前の左房径が拡張している症例においては、心筋組織の線維化が進行するなどリモデリングが進行している所見がみられており、これらが周辺脂肪に影響している可能性が考えられる。今後の検討として、回帰分析などの手法を用いて、各遺伝子発現に影響する因子を推察することにより、どの因子が炎症やミトコンドリア機能低下に影響しているのかを模索するとともにより多くの症例を収集し、サブグループ解析を行う。
また遺伝子解析とともに組織そのものにどのような影響が及んでいるかを検索するため組織化学解析も同時に進めていく予定である。

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公開日: 2018-12-17  

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