冠動脈が心外膜脂肪織の中を走行中に一部心筋組織に被覆されている解剖学的亜型を心筋架橋(Myocardial bridge:MB)と呼び、病理では日本人の約半数に認められるとも報告されている。本研究は川崎医科大学で運用されているKIBIDAN-GOレジストリを用いて後ろ向きに、光干渉断層法(OCT)を用いてMBの頻度、MB例においてMB部とMB近位部におけるプラーク性状や不安定性の違い、MBの有無で左前下行枝(LAD)近位部並びに遠位部のプラーク性状や不安定性の違いを検討した。 OCTでMBは冠動脈周囲に中等度の光強度を伴うfineな層と定義した。LADにMBを認めた際は厚みと長さを計測した。MB例ではMB部とMB近位部で、非MB例ではLAD遠位20mmと近位30mmでプラークの量と性状をそれぞれ比較した。 研究期間は2017年1月1日から2020年12月31日で対象は70例(男性71.4%、平均年齢66±11歳)であった。 MBは47例(67.1%)で認め、MBの厚みは0.66±0.19mmで長さは18±10mmであった。MB例ではMB部と比較してMB近位部でプラーク量が多く、プラーク不安定性並びに石灰化病変が高率であった。一方で非MB例では遠位部と比較し近位部でプラーク長、最大プラーク角度、最小内腔面積は有意に大きく、最大プラーク面積率は差を認めなかった。LAD遠位部ではMB例で非MB例と比較してプラーク長、最大プラーク面積率、最大プラーク角度、最小内腔面積が小さかった。プラーク性状はMB部ではFibrousが多いのに対して非MB例ではFibro calcificationの割合が多かった。プラーク不安定性や石灰化病変もMB例と比較して非MB例で高率に認めた。LAD近位部ではMLAはMB例で小さいが、プラーク不安定性やプラーク量はMBの有無で差を認めなかった。
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