研究課題/領域番号 |
17K09537
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
上村 史朗 川崎医科大学, 医学部, 教授 (60224672)
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研究分担者 |
久米 輝善 川崎医科大学, 医学部, 講師 (60341088)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 冠動脈疾患 / 不安定プラーク / 光干渉断層 / 病理組織学的検討 |
研究実績の概要 |
急性冠症候群などの重篤な心血管イベントは、動脈硬化プラークの血管内腔面を覆う線維性被膜の障害、すなわちプラークの破綻(rupture)あるいはびらん(erosion)と同部位での閉塞性血栓の形成が主因となって発症する。近赤外線を用いた光診断技術が進歩し、これらを用いた我々の成果を含む最近の研究によって、近い将来に急性冠症候群の発症に繋がる可能性の高い“不安定プラーク”を臨床的に同定できる可能性が示されてきた。しかし現状では、不安定プラークを高い精度で診断して、臓器への急性血流障害を発症する前に局所病変を治療する方法はいまだ確立されていない。本研究では、光干渉断層法(OCT)および近赤外線分光法(NIRS)を用いて急性心血管イベントの差し迫った病変を高い精度で同定すること、さらに光線力学治療的アプローチによって動脈硬化巣の安定化と心血管イベント発症を予防する先制医療的治療法を確立することを目的として実施している。 平成29年度においては、基礎的な検討として、冠動脈疾患患者における高度狭窄を示す責任冠動脈硬化病変を対象として、光干渉断層法(Optical Frequency Domain Imaging)を用いて詳細に観察し、同部位を方向性冠動脈粥種切除術(Directional Coronary Atherectomy)を用いて切除、摘出した組織サンプルに関する検討を行った。本研究では10例の冠動脈疾患患者から同意を得て摘出した動脈硬化病変17か所を解析した。その結果、病理組織学的には非破裂の動脈硬化巣であっても約70%においてプラーク内の出血が存在、さらに同部位のOFDI所見では動脈壁内の層状を示す所見、強いattenuationを伴う線状高輝度帯を特徴とすることが明らかになり、光線力学的治療法の標的となる病変形態を組織学的、臨床的に同定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度において実施した研究内容は、第82回日本循環器病学会総会(大阪、2018年3月25日)にて Validation of OCT coronary tissue characterization in the reference to plaque histopathology obtained by directional coronary atherectomyとして発表した。本発表では、摘出した組織標本をHEおよびシリウスレッド法を用いて染色し、冠動脈硬化病変の組織学的特徴をOFDIイメージングと比較した。その結果、病理組織学的には非破裂の動脈硬化巣であっても約70%においてプラーク内の出血が存在すること、さらに同部位のOFDI所見では動脈壁内の層状を示す所見、強いattenuationを伴う線状高輝度帯を特徴とすることが明らかになった。さらにプラーク内に認められた出血巣は器質化の変化を示すこと、周辺にはmicrocalcification、lipid accumulationを伴うことが多い特徴があった、これらの研究成果から、最終目的である光線力学的治療法の標的となる病理組織学的、臨床的特徴の目安がついたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度においては、平成29年度に行った検討結果に基づいて光線力学治療的アプローチによって動脈硬化巣の安定化と心血管イベント発症を予防する先制医療的治療法を確立することを目的として研究活動を継続する。 具体的な到達目標は、1)摘出動脈硬化病巣に対して免疫組織学的染色法を含めたさらに詳細な検討を行い、光線力学治療のターゲットとなる細胞、組織をさらに絞り込むこと、2)1)で同定される特定の細胞・組織に特異的かつ効率的に取り込まれる光増感物質のスクリーニングを行うこと、3)細胞内に取り込まれた光増感物質の励起を行うためのレーザー照射機器の開発と指摘条件の設定、4)WHHLウサギの大動脈に発生する動脈硬化巣を用いた実験系において光線力学治療の効果を実験的、病理学的に検討することである。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究内容の進捗状況のうち、免疫組織学的検討が予定より遅れていることにより次年度の使用額が増加した。次年度使用額は30年度交付額と合わせて光線力学的研究内容に使用する予定である。
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