急性冠症候群は、動脈硬化プラークの表面を覆う線維性被膜の障害、すなわちプラークの破綻あるいはびらんと同部位での閉塞性血栓の形成が主因となって発症する。本研究では、光干渉断層法(OCT)を用いた基礎的・臨床的検討を行うことにより、急性心血管イベントの差し迫った病変の特徴の解明と不安定な動脈硬化巣の安定化を介した心血管イベントの予防法を確立することを目的として実施した。 本研究は、ヒト安定冠動脈プラークをOCTで観察し、同部位を方向性冠動脈粥種切除術(Directional Coronary Atherectomy)を用いて摘出した組織サンプルを病理組織学的および生化学的に解析を行い、冠動脈硬化病変の組織学的特徴をOCTイメージングと比較した。その結果、非破裂の動脈硬化巣であってもプラーク内出血が存在すること、さらに同部位のOCT所見では動脈壁内の層状を示す所見、強いattenuationを伴う線状高輝度帯を特徴とすることが明らかになった。さらにプラーク内に認められた出血巣は器質化の変化を示すこと、周辺には微小石灰化、脂質沈着を伴う特徴を示し、これらの冠動脈プラークはPCSK-9阻害薬による強力なLDL低下治療によって、安定化がもたらさせることを明らかにした。 これらの研究の成果は、第83回日本循環器病学会総会にて口頭発表し、論文Prevalence and clinical significance of layered plaque in patients with stable angina pectoris - Evaluation with histopathology and optical coherence tomography. Circulation Journal 2019;83(12):2452-2459.として公表した。
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