研究課題/領域番号 |
17K09541
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
宮本 康二 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医師 (50726429)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 抗凝固療法 / 心房細動 / 血中濃度 |
研究実績の概要 |
本研究では、液体クロマトグラフィー質量分析法を用いてDOACの血中濃度測定を行い、その臨床背景と臨床経過を前向きに追跡することで、DOACの血中濃度をもとにした出血性合併症発生のリスクを定量化することを目的としている。ただし、外来での日常臨床において、出血性合併症を認める頻度はそれほど多くない。したがってまず我々は、外来での日常診療時よりも出血性合併症の頻度が多いと考えられるカテーテルアブレーション時において、DOACの血中濃度と臨床経過(ヘパリン使用量、出血性合併症の頻度)との関連を検討し、2017年第65回日本心臓病学会学術集会シンポジウムにおいて発表を行った(演題名:心房細動カテーテルアブレーション時のヘパリン必要量と直接経口抗凝固薬血中濃度の関連について)。心房細動に対してアピキサバンもしくはリバーロキサバンによる抗凝固療法を行っており、当院にてカテーテルアブレーションを行った95例を対象にした。平均年齢:62±14歳、男性63例(66%)、アピキサバン58例、リバーロキサバン37例で、アピキサバンはアブレーション前日夕まで、リバーロキサバンは前日朝までの内服として、アブレーション当日朝に、液体クロマトグラフィー質量分析法(HPLC-MS/MS, Shimadzu corp. Kyoto, JPN)を用いてDOACの血中濃度を測定した。その結果、アピキサバンにおいては、薬剤血中濃度が低い場合、術中のヘパリン使用量が多くなり、それが出血性合併症や止血遅延を形成しやすくなることにつながることが判明した。本知見により、DOACの血中濃度測定は、カテーテルアブレーション時の管理に有用であることが示されたと同時に、外来での日常診療でも、DOACの血中濃度と臨床経過にはやはり何らかの関係性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究計画は以下の3点であり、現段階での進行状況を報告する 1. DOAC(直接経口抗凝固薬)内服中の心房細動患者のデータベースを作成する:研究開始時点で我々が有していたDOAC内服中の心房細動患者約2000例に加え、約500例の臨床データ【年齢、身長、体重、CHADS2 score (うっ血性心不全、高血圧、年齢、糖尿病、脳梗塞・一過性脳虚血発作の有無)、心機能、腎機能など】を収集し、データベースに追加した。 2. 液体クロマトグラフィー質量分析法を用いたDOACの血中濃度測定(トラフ値およびピーク値)および従来の各種凝固線溶系パラメータの測定:DOAC血中濃度の測定は主に入院患者を対象としているが、本年度だけですでに約250例の症例で、DOACの血中濃度を測定している。また各種凝固線溶系パラメータとして、PT、APTT、TAT、Fibrinogen、SFMC、von Willebrand factor、FDP及びD-dimerを測定している。 3. 腎機能障害の有無・程度の検討を行う:腎機能に関しては従来よく用いられている血清クレアチニン値、クレアチニンクリアランス、糸球体濾過量に加えて、シスタチンCの測定も行っている。本年度だけで約250例の症例のデータを収集した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究はおおむね予定通りに進展しており、平成30年度、31年度においても、平成29年度と同様に、データベースの更新、DOACの血中濃度測定、腎機能障害の有無・程度の検討を行う。またそれらの症例における臨床経過(出血性合併症の有無・程度、塞栓症の発生など)の追跡も行う。本研究が計画通りに進まない場合には、適宜話し合いを持ち必要箇所を修正していく。本研究データの統計解析、出血性合併症リスクの定量化に関しては、当センター内のデータサイエンス部・統計室に適宜相談しながら解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はデータベースの作成が主な活動であり学会発表が少なかった。またDOACの血中濃度測定に使用する物品に関しても、在庫があり新たな購入が必要なかった。以上のことから本年度の直接経費での支出は予定より少なく、次年度使用額が生じた。
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