研究課題/領域番号 |
17K09542
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
安田 聡 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 副院長 (00431578)
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研究分担者 |
高山 守正 公益財団法人日本心臓血圧研究振興会(臨床研究施設・研究部門), 副院長室, 特任副院長 (00171562)
住吉 徹哉 公益財団法人日本心臓血圧研究振興会(臨床研究施設・研究部門), 内科医局, 副院長 (30096599)
小島 淳 川崎医科大学, 医学部, 教授 (50363528)
竹上 未紗 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究開発基盤センター, 室長 (50456860)
西平 賢作 宮崎大学, 医学部, 研究員 (60736312)
木村 一雄 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター, 教授 (90214866)
中尾 葉子 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究開発基盤センター, 研究員 (90752824)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心筋梗塞 / 高齢者 / データベース |
研究実績の概要 |
急性心筋梗塞 (acute myocardial infarction, AMI) の中でも左冠動脈主幹部 (left main coronary artery, LMCA) を責任病変とするAMIは心臓性突然死につながる高リスクの病態でありその対策が求められている。AMIに対する緊急冠動脈インターベンション (percutaneous coronary intervention, PCI) による早期の冠血流再開は、予後改善に寄与することが報告されている。しかし、LMCA梗塞に対する至適血行再建療法に関しては、小規模レジストリ研究からの報告が主体で依然として明らかではない。本研究では、全国レベルのデータベースであるJapan Acute Myocardial Infarction Registry (JAMIR) のデータを用いて、LMCA梗塞の頻度、臨床的特徴、緊急PCIの予後に与える影響を検討した。 2011年1月から2013年12月までの期間に入院した13,548例のAMI患者を対象とした:404例 (3%) がLMCA梗塞、13 ,144例が非LMCA梗塞であった。LMCA梗塞は高齢者や非ST上昇型心筋梗塞や心原性ショックが多く、院内死亡も有意に高かった (LMCA梗塞, 23.3% vs. 非LMCA梗塞, 5.5%)。さらには、緊急PCIは非LMCA梗塞患者の院内死亡率の改善には関連したが、LMCA梗塞患者の院内死亡率改善とは関連しなかった。また、来院から再灌流までの時間 (door-to-balloon時間) は、非LMCA梗塞患者において院内死亡と関連していたが、LMCA梗塞患者では関連していなかった。LMCA梗塞に対する緊急PCIは、来院から再灌流までの時間を短縮しても高い死亡率を示していた。心筋保護的な新たな治療戦略確立の必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
JAMIR同様、 KAMIR; Korean Acute Myocardial Infarction Registry (研究代表者Myung Ho Jeong教授, Chonnam National University Hospital)は、韓国における急性心筋梗塞患者の多施設共同レジストリである(http://www.kamir.or.jp)。2005年以降PCIが可能な40以上の施設が参加して全国レベルで登録が行われている(Thromb Haemost. 2018 ;118:591-600.)。さらにSMIR : Singapore myocardial infarction Registry (研究代表者Khung Keong Yeo教授、National Heart Center Singapore)は、シンガポールの全PCI病院から2007年以降 7500例を越すデータを集積している(CJEM. 2017 Sep;19(5):355-363.)。JAMIR, KAMIR, SMIR間ではすでに収集データ項目を開示しておりそれらを統合・解析する体制を整備する。質の高い大規模なリアルワールドデータとして、①各国の診療の特徴・疾患リスクが明らかになる とともに、②他国との比較の上で診療内容を吟味し自国の医療の改善につなげる 特に③アジア人のデータ統合によりその特性・欧米人との相違を明らかにすることでアジアガイドライン策定にもつながることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
世界保健機構(WHO)ではrisk management cycle (リスク査定→選択肢の創出→選択肢の評価及び選択→便益評価)に準じて疾病の危険性を評価し対策を講じることが提唱されている。このcycleの起動により、疾病の危険性を評価し、対策を講じ、検証する。本研究にて急性心筋梗塞後の出血イベントのリスク因子を解析できれば、アジア人における最適な抗血小板療法の探索につながる重要なエビデンスの発信ができるものと思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)他国とのデータ統合に関して条件の整備等実施に至らなかったため。 (使用計画)データベース整備とクリーニング(委託費)等に充当する予定である。
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