研究課題/領域番号 |
17K09545
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
鎌倉 令 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医師 (80726943)
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研究分担者 |
草野 研吾 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (60314689)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 早期再分極症候群 |
研究実績の概要 |
早期再分極症候群は、心電図の下側壁誘導(Ⅱ,Ⅲ,aVF,aVL,V4-6)に早期再分極(J波)を有し、心室細動による突然死をきたす疾患である。従来の早期再分極症候群の診断の問題点として、冠攣縮性狭心症が十分に除外されていないことが挙げられていた。日本人に多いとされる冠攣縮性狭心症は、早期再分極症候群と同様に器質的心機能異常を認めない例で心室細動の原因となる疾患であるが、欧米では冠攣縮性狭心症に対する認識が乏しく、ほとんどの欧米の早期再分極症候群に関する論文には冠攣縮誘発検査の記載がないため、早期再分極症候群として集積された症例のかなりの部分が胸痛を伴わないか、あるいは突然心室細動に移行した冠攣縮性狭心症であった可能性があった。 我々は早期再分極を有する特発性心室細動例において冠攣縮性狭心症の誘発試験を行うことで、40%が冠攣縮性狭心症と診断しうることを報告した。また早期再分極を有する心室細動蘇生後の冠攣縮性狭心症の40%は胸痛を伴わないことを報告した(J Am Heart Assoc. 2018;7:e007942.)。冠攣縮性狭心症においては抗狭心症薬が著効するため、両者の鑑別は必須であり、本研究の臨床的意義は高いものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
早期再分極は全人口の10%前後に存在する一般的な心電図所見であるにも関わらず、心室細動に至る早期再分極症候群の病態、予後は未解明である。このため臨床の現場では、いかにハイリスク例を抽出し、治療介入を行うかの判断に難渋するケースに多々遭遇する。さらに、これまでに報告されている早期再分極症候群自体が、Brugada症候群や冠攣縮性狭心症を含んだ疾患群で、従来報告されている臨床的特徴や予後予測指標が偽りの指標である可能性が高い。今後、Brugada症候群や冠攣縮性狭心症を厳密に除外した早期再分極症候群において臨床病態や予後を再検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
国内の不整脈診療の中心的施設との多施設共同研究を行っており、2018年3月末までに約50例の早期再分極症候群の登録が完了している。早期再分極症候群における予後予測指標を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究初年度であり、元々所有している物品を使用して研究を行ったため、新たに物品を購入する必要が少なかった。次年度以降に研究に必要な物品を購入していく予定である。
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