研究課題/領域番号 |
17K09551
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
近藤 隆久 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座教授 (00303644)
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研究分担者 |
足立 史郎 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (60782430)
奥村 尚樹 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (60788371)
室原 豊明 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90299503)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肺高血圧症 / 血管内皮促進因子(VEGF-A) / 血管内皮抑制型アイソフォームVEGF-A165b |
研究実績の概要 |
肺高血圧症は、肺動脈の攣縮・狭窄と肺毛細血管の消失による肺動脈圧上昇のため、最終的には右心不全をはじめ全身の機能障害をもたらす極めて予後不良の進行性の疾患である。肺高血圧症の進展には、血管内皮促進因子(VEGF-A)の関与が知られているが、従来報告された血中VEGF-A は、促進型(VEGF-A165a)と抑制型(VEGF-A165b)を合わせた値であった。本研究では、肺高血圧症の進展と血管内皮促進因子(VEGF-A)のアイソフォーム(促進型:VEGF-A165a、抑制型:VEGF-A165b)の注目した。107名の肺高血圧症患者 [肺動脈性肺高血圧症(1群)48名、左心不全に伴う肺高血圧症(2群)5名、呼吸器疾患に伴う肺高血圧症(3群)4名、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(4群)50名]と33名の肺高血圧症を認めないコントロール患者について比較した。1群48名の内訳は、特発性肺動脈性肺高血圧症16名、膠原病関連肺動脈性肺高血圧症17名、先天性心疾患に伴う肺動脈性肺高血圧症6名、門脈圧亢進に伴う肺動脈性肺高血圧症5名であった。コントロール群のVEGF-Aは、441.6±326.4 pg/ml、VEGF-A165bは75.2±50.3 pg/mlであった。コントロール群と比較すると、VEGF-A濃度は、1群(419.7±480.5pg/ml, p=0.098)、2群(331.6 ± 252.0 pg/ml, p=0.399)、3群(639.8 ± 360.8 pg/ml, p=0.001)、4群(339.4 ± 261.2 pg/ml, p=0.033)であり、3群、4群で有意な上昇を認めた。一方、VEGF-A165bは、1群、3群・4群で有意に上昇していた。 これまでの結果より、肺高血圧症3群ならびに4群ではVEGF-AならびにVEGF-A165bの発現量が疾患発症に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
患者登録は、順調に進み、登録時の総VEGF-A血清レベルならびに抑制型アイソフォームレベルの測定は終了している。肺高血圧症患者では、治療開始前と治療後の自覚症状や心臓カテーテル検査における各指標の反応性が予後と相関することが近年判明している。そのため、本研究においても、登録時の総VEGF-A血清レベルならびに抑制型アイソフォームレベルとの関係を検討を行う予定である。平成31年3月末まででは、フォローアップのための検査が終了した数は限定されており、平成31年度における検査が引き続き必要となっている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで測定した総VEGF-A血清レベルならびに抑制型アイソフォームレベルと臨床上得られる様々なパラメーターとの相関をチェックする。さらに、総VEGF-A血清レベルおよび抑制型アイソフォーム以外の血管新生因子の測定し、フォローアップデータとの相関を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
総VEGF-A血清レベルならびに抑制型アイソフォームレベル以外の血管新生因子の測定キットの精度が不安定であることが判明し、平成30年度末までには終了できなかった。平成31年度に他の測定キットにて安定して測定できることを確認した上で再度総VEGF-A血清レベルならびに抑制型アイソフォームレベル以外の血管新生因子行う予定である。また、肺高血圧症ではベースライン時の臨床パラメーターよりもフォローアップ時の臨床パラメータの方が予後と相関すること明らかとなったため、フォローアップ時の臨床データが必要となり、平成31年度まで使用額が生じた。
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