冠動脈疾患予防には、低比重リポ蛋白(LDL)低下のみでは不十分であり、残余リスクの評価が重要である。我々は、糖代謝異常を有する冠動脈疾患患者においては、持続血糖測定 (continuous glucose monitoring: CGM)システムを用いて測定した血糖変動の指標(mean amplitude of glucose excursion: MAGE)がプラーク脆弱性、新規病変の発症に関与し、そのメカニズムとして炎症惹起性の高い単球サブセットの増加と関連していることを示した。引き続き、培養細胞やアイソトープを使用せず、超遠心法によるHDL分離を必要とせずに短時間に多検体を処理できる高比重リポ蛋白(HDL)特異的コレステロール取込み能 (Cholesterol uptake capacity: CUC)の意義を検証した。冠動脈疾患患者において、光干渉断層映像法 (OCT)で評価した脆弱性プラークとCUCに逆相関が認められ、これは血中LDL-C値と独立していた。一方、冠動脈ステント留置後の患者では、新生内膜内新規動脈硬化病変の形成にCUCが有意に関連していることが示された。介入治療として、高強度スタチンとEPA製剤を用いた介入により、通常の脂質低下療法と比較して、動脈硬化病変の進展を抑制すること、冠動脈ステント留置後患者においては、ステント内新規動脈硬化の進展を抑制することが判明した。今後、CUCをLDLとは独立したリスク指標として活用し、冠動脈疾患に対する新規の治療戦略を開発することが期待される。
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