研究課題
世界各国の主要な死因の一つである急性心筋梗塞は、主にplaque ruptureを契機に発症するため、plaque ruptureの発生メカニズムに関し研究が続けられてきた。近年の電子顕微鏡を用いた研究結果から、コレステロール結晶(cholesterol crystal: CC)が、直接プラークを貫きplaque ruptureを起こしている可能性が示された。しかし生体内におけるCCとplaque ruptureとの関係は不明である。高解像度生体内画像診断法である光干渉断層法(optical coherence tomography: OCT)の登場により、生体内でのCC評価の可能性が示された。しかし病理との比較データは存在せず、生体内におけるOCTによるCC検出精度に関しては不明である。そこで、我々は、OCTのCCに対する診断能力を病理診断と比較検討し、OCTを用いて生体内におけるplaque ruptureとCCの関係について検討を行った。本研究は、世界で初めて、病理学的診断と比較してOCTによるCCの診断精度を明らかにした。OCTはCCに対し、92%と高い特異度を有するが、68%と感度は中等度であることが明らかとなった。また、OCTによるCC評価の検者間および検者内の一致率は良好であった。以上より、生体内CCの診断におけるOCTの利用は妥当と考えられた。また、本研究は、生体内CCがplaque rupture 発症に関与をしていることを世界で初めて示した。線維性被膜に穿通したCCはplaque ruptureとそれに続く急性心筋梗塞と強く関連している。本研究の意義は、CCが①プラーク進展・不安定化の新たなマーカーとして、②新たな治療ターゲットとして、③プラークの退縮・安定化のサロゲートマーカーとして利用できる可能性を示した点である。
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Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology
巻: 40 ページ: 220~229
10.1161/ATVBAHA.119.312934