研究課題/領域番号 |
17K09559
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
岸本 聡子 獨協医科大学, 医学部, 助教 (10511488)
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研究分担者 |
井上 健一 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (90587974)
佐久間 理吏 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (10530199)
井上 晃男 獨協医科大学, 医学部, 教授 (20168454)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 創傷治癒 / 間質細胞 / 傷害刺激 / 血管新生 |
研究実績の概要 |
今年度は、創傷治癒Primingのプロセスを主に細胞間シグナルの観点から研究した。マイクロアレイ解析からは、傷害刺激前後で皮下脂肪 Stromal Vascular Fractions(SVFs)の遺伝子発現に劇的な変化が生じ、自然免疫シグナルや急性炎症反応、低酸素関連シグナルの関与が示唆された。Priming1日後の皮下脂肪内では、低酸素誘導因子(HIF-1α)の顕著な安定化が観察されたが、片方のみの傷害刺激(Injury only or Ischemia only)では観察されなかった。 フローサイトメトリー解析により、Primed SVFの細胞組成が経時的に変化した。特に、脂肪SVF中のマクロファージの割合が上昇すること、Priming後期には間質細胞が増殖によって数を増加させることなどを発見した。また、創傷治癒Primingには骨髄細胞の動員が必須であることが分かった。 下肢虚血モデルにPrimed SVFを移植すると、移植後14日目までに血管新生が有意に促進され、CD31陽性の血管面積が有意に増加した。また、細胞内での血管内皮細胞増殖因子(VEGF-A)の合成はPriming5日後にピークを迎えた。これらの結果より、損傷(Injury)と虚血(Ischemia)を組み合わせることで、VEGF-Aの合成を通して毛細血管の新生を誘導することが示された。 以上より、創傷治癒Primingは時空間で変遷するシステムであり、組織に常駐する間質細胞と骨髄から動員される細胞のダイナミックな相互作用で成り立っていることが明らかとなった。しかし、骨髄細胞がどのように脂肪組織中を遊走し、常駐する間質細胞とどのように相互作用するのか、また間質細胞は何をきっかけに増殖するのかについては未解明のままである。次年度は、Fucci(Fluorescent ubiquitination-based cell cycle indicator)プローブが組み込まれた遺伝子組換マウス(FUCCIマウス)を活用し、Primingに関与する個々のSVF細胞を組織内で生きたまま観察することによって、遊走と増殖の法則を解明する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果として、創傷治癒Primingには骨髄細胞の動員が必須であること、脂肪SVF中のマクロファージの割合が上昇すること、Priming後期には、間質細胞が増殖によって数を増加させることなどを発見し、論文として発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで技術的な制約から、骨髄細胞はどのように脂肪組織中を遊走し、常駐する間質細胞とどのように相互作用するのか、また間質細胞は何をきっかけに増殖するのか、については答えることができていなかった。今後、Fucci(Fluorescent ubiquitination-based cell cycle indicator)プローブが組み込まれた遺伝子組換マウス(FUCCIマウス)を活用し、Primingに関与する個々のSVF細胞を組織内で生きたまま観察することによって、遊走と増殖の法則を解明する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
マイクロアレイ解析を2回実施する予定で予算を組んでいたが、1回の実施で必要な結果が揃ったため次年度使用額が生じた。次年度使用額は、当初の計画を更に発展させる研究内容として、遺伝子組み換えマウスを用いた細胞周期解析に使用することを計画している。
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