間葉系幹細胞は動脈硬化の基礎病態である炎症・内膜障害を抑制する因子を分泌している。本研究では、脂肪間葉系幹細胞シートの動脈硬化に対する抗炎症・血管内細胞保護・血管平滑筋増殖抑制作用と結果として得られる動脈硬化進行抑制・血管狭窄抑制・血管正常化効果を培養細胞・小動物・大動物動脈の実験で明らかにすることを目的としている。 前年度までに、脂肪間葉系幹細胞シートを動脈の外膜へ移植することによりラットの血管障害モデルだけでなく、動脈硬化モデルの血管でも狭窄抑制効果を持つことを確認することができていた。 本年度は、生体外で大動物の血管を採取し、生体外で血管狭窄抑制効果を確認するための灌流培養系の確立と、血管狭窄抑制効果候補因子の検討を行った。 1)灌流培養系の確立に関しては、生体から採取した組織の持続灌流培養を行い、流量と流入圧の管理を行うことには成功したものの、数日の灌流培養で組織の浮腫が起こる事や、培養液の漏出が多くなることが判明した。今後は、還流用培地の検討を行い引き続き生体外灌流システムの構築を行い、細胞シート治療における血管内膜の変化を観察し、治療病態を解析できるモデル作製を目指していく。2)治療効果候補因子の検討に関しては、間葉系幹細胞シートを一定の分子量の大きさしか透過させないパックで被覆し移植したところ、狭窄抑制効果を確認することができた。これにより、治療効果因子の分子サイズから絞り込みをすることに成功した。今後は、候補因子に関してノックアウト技術を使い絞り込みを行っていく予定である。
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