研究課題/領域番号 |
17K09562
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
高木 元 日本医科大学, 医学部, 講師 (00301565)
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研究分担者 |
宮本 正章 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50229895)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 高気圧酸素治療 / 重症下肢虚血 / 血管再生治療 |
研究実績の概要 |
データベース構築:本年は重症下肢虚血患者レジストリが完成し過去16年におけるデータベースの作成を行った。 高気圧酸素治療:学会発表を通じ本研究の内容を公表し、日本高気圧環境・潜水医学会通常評議員に任命された。これに伴い学会教育委員を拝命し、末梢動脈疾患に対する安全な高気圧酸素治療法の確立と本研究結果の日本国内医療従事者への教育を担当することとなった。特に本年はレジストリから判明した重症下肢虚血患者への高気圧酸素治療回数と予後の関連を統計学的に考察しカットオフを求めるなど有効性評価の基盤となるデータ構築に努めた。また医療器具の高圧環境下での適正作動の検証など臨床治療において重要な基礎的研究も行い発表した。2018年度診療報酬改訂における保険点数の大幅な見直しに関しては厚生労働省への改定申し立てに研究分担者である宮本正章医師が同行し、本研究の対象疾患と治療内容(適正治療回数と期間等)の適正化を申請した。この申請の本意は認知度が低迷している高気圧酸素治療の有効性の再評価と全国での適正な普及であり、結果として学会を通じての要望が認められた。 血管再生治療:本年は特に血管機能に対する力学的刺激の影響を研究しその結果を論文化した。また学会発表においては我々が開発した再生医療の適応拡大に向けた基礎研究や、血管機能評価に関わる発表を行い、血管不全学会では最優秀演題を受賞した。 病院管理:当院急性期病棟スタッフと連携し、本研究の対象となる重症下肢虚血患者の24時間診療体制の構築の詳細を調整。病態上透析患者など機材を要する患者も多く急変対応時の科を超えたチーム診療体制を確認した。本研究の基盤として全身状態が安定していることが前提であるため、早期の栄養状態評価などの介入も重要であり、研究代表者はNST(ニュートリションサポートチーム)のリーダーとしても回診、カンファレンス等病院内の管理を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データベース構築に必要な機材と必要なソフトウェアの購入ができたため、入力作業を開始した。本年度は血管再生治療並びに高気圧酸素治療を開始した2002年以降の医療記録をさかのぼり過去データより重症下肢虚血患者約300例を抽出、すべての患者の基盤データの入力に労力を費やした。重症下肢虚血症例の紹介は以前と同様に推移しており、年間60~70名の患者の加療を行っている。また多変量解析やカットオフ算出のためのROCカーブを活用した統計解析が可能な環境準備が完了している。高気圧酸素治療の第2種装置を有する大学病院は東京都内で2施設のみであり、2018年度診療報酬改定に伴う関東圏からの治療依頼が急増している(昨年度比+40%以上)。大学病院手術室移転に伴い細胞調製室(cell processing center: CPC)も移転し、厚生労働省へ手続き済みである。診療実施体制の調整を行い、再生医療を含めた研究を継続する状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
レジストリフォーマットが完成し、患者登録を継続し診療行為を継続していく。 高気圧酸素治療に関しては紹介患者が順調に増加しているため、2018年度診療報酬改定に準じた新適応の判断と治療回数上限を設定するための診断ツールを作成、周知を行う。また診療報酬改定に見合う電子カルテ内のオーダー入力方法も更新し、勤務時間外の緊急入院症例に対する当直医による治療開始手順のフローチャートを作成し遅滞なく初期加療が行える院内システムの構築を行う。 再生治療は、「骨髄幹細胞移植による血管再生治療」として行ってきた先進医療A終了に伴い先進医療B申請施設である京都府立医科大学循環器内科と連携を図り、共同研究施設として特定認定再生医療委員会に認定された。書類手続き完了後厚生労働省へ登録し治療を再開する予定である。また海外企業からの血管再生治療治験の依頼を受け準備中でもある。再生治療の新規認定に伴いホームページ上で患者や医療関係者への案内も順次更新し、更に研究会、学会を当して学外医療機関への治療協力要請による患者紹介を増大させていく。本研究成果をまとめることにより日本国内で血管病(動脈硬化性疾患等)への有効性と独立危険因子等治療抵抗性の病態についても明らかになる予定である。
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