本研究は循環器内科と高気圧酸素治療部との共同プロジェクトとなるため、開始後速やかに研究準備を行い、院内診療協力体制構築を企画し、達成した。次に臨床研究に即した人員の配備を行い、研究を安全に遂行する院内環境づくりを整えた。この後、外部医療施設を対象に研究対象者の募集を開始し、近隣医療機関よりの診療依頼を得られた。これに加え、先行研究の成果発表や当該研究に近似する国内外の総説をまとめ、各学会にて発表を行うことができた。 今年度は本研究に関する学会参加と発表を主体に行った。特に高気圧酸素治療に関する国内医療機関での認知度は高くないため、学会発表を通じて高気圧酸素治療の有用性と本研究対象疾患である末梢動脈疾患の国内外の臨床報告に関するレビューを行った。この内容は日本高気圧環境・潜水医学会雑誌へ投稿し、近年のエビデンスレポートとして論文として受理され、発行された。 本研究で得られた情報では、高気圧酸素治療や血管再生治療の単独治療効果のエビデンスは現状では乏しく、他の治療法と組み合わせることが推奨されている。従って本研究の目的である高気圧酸素治療と血管再生治療を組み合わせたハイブリッド型のプロトコールは十分に期待できると考える。 末梢動脈疾患に関しては、昨年度より重症下肢虚血患者に対して新しく保険認可された遺伝子治療を導入し、対象症例へ投与後長期フォローアップを行った。またこれまでの治療成績から判明した血管再生治療効果に関する機序と臨床的有用性について、日本脈管学会、日本再生医療学会や日本フットケア・足病医学会など本研究テーマに即した各学会へ参加し情報共有を行っている。 治療実績だが、COVID-19パンデミックの発生後、医療連携を通じて紹介いただく患者数が極端に減少したままであり、必要症例数に満たない状況が続いている。本研究は今後も継続し、早期に論文発表を予定している。
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