研究課題
慢性腎臓病患者の予後を規定する冠動脈硬化症に対する新たな治療戦略策定を目指し、動脈石灰化の発生と進展の機序解明を目的とする。冠動脈rotablator治療後に冠循環から体循環に流出する動脈硬化血管壁由来分子を含む血液検体を用い、in vivoのアテローム性動脈硬化に関わるエクソソーム内miRNAを同定し、治療前後の動態ならびにその機能を解明し、治療法開発への発展を目指す。本年度は基礎実験として、患者および健常人の血清から様々な市販キットを用いてmiRNA抽出を行ったが、得られたmiRNA量は少なく、そのクオリティも良いものとはいえなかった。このサンプルを用いてマイクロアレイ解析を行ったが、検出感度が非常に低く、解析を行なう事が困難であった。改善策として、血清の量を増やすことでサンプル量を増やすことが必要と考えられたが、今回使用する血清サンプルは採血量に限りのある患者検体を使用する為、当初の計画で予定していたマイクロアレイ解析から、より高感度が期待できる次世代シーケンサーでの解析を行なう事とした。和光純薬Wako exosome Isolation kit PSを用いて2人分の血清からエクソソームを抽出し、得られたエクソソームからWako マイクロRNAエキストラクターSPキットを使用してRNAを抽出した。得られたサンプルについて、ライブラリ調製をIllumina社SMARTer smRNA-Seq kitで行い、同社のNextSeqによりシーケンスを実施して、得られた読み取り結果をリファレンスゲノムHuman genome hg19を選択してStrand NGS ver3.1ソフトにて解析した。その結果、2人のサンプルとも十分なリードが得られ様々なRNA分子種が検出された。感度、精度共に満足のいく実験条件を設定できたので、今後サンプル数を増やし解析を進めていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究協力者の助言や実質的な助けを得て、研究計画に基づいた計画と方法で検討が進んでいるため。
基礎実験で次世代シーケンサーを用いて解析を行なうことにより十分なリードが得られ様々なRNA分子種が検出され、感度、精度共に満足のいく実験条件を設定できたので、今後はこの実験系で慢性腎臓病患者の石灰化冠動脈に対するRotablator治療前後で採取した検体を用いアテローム性動脈硬化に関わるmiRNAを同定し、そのmiRNAの治療前後の動態ならびにその機能を解明することを目指す。また候補miRNAのvalidationをRNAサンプルを用いてreal-time PCRで行い、再現性を確認する予定である。
次世代シーケンサー、リアルタイムPCR解析によりmiRNAsの探索実験を実施するため、その予算として次年度に使用する予定にしている。
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