研究課題/領域番号 |
17K09568
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
磯 達也 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (10400756)
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研究分担者 |
大日方 英 群馬大学, 未来先端研究機構, 准教授 (50332557)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心肥大 / 構造リモデリング / 代謝リモデリング / 脂肪酸代謝 / グルコース代謝 / 心不全 |
研究実績の概要 |
血行動態的負荷の増加によって心筋細胞肥大や間質線維化(構造リモデリング)が誘導される。心臓の構造リモデリングの分子機序に関して多くの研究がなされてきたが、エネルギー代謝変換(代謝リモデリング)の調節経路、および構造リモデリングと代謝リモデリングとの統合的な調節メカニズムについてはほとんど不明であった。申請者らは、脂肪酸取り込み障害と代償的なグルコース取り込みの亢進を呈する脂肪酸結合タンパク4/5(FABP4/5)二重欠損マウス(DKOマウス)に大動脈縮窄(TAC)による心肥大モデルを作成し、これらの疑問点にアプローチした。DKO-TACマウスでは、心収縮は低下し、心筋肥大と間質線維化は野生型と同等に誘導された。メタボローム・フラクソーム解析を用いて、肥大心筋では、高エネルギーリン酸(ATPとホスフォクレアチン)産生が低下しており、また、取り込まれたグルコースがTCA回路経由によるATP産生よりも、アミノ酸・脂質・核酸の生合成に優先的に利用されることを明らかにした。次に、この知見をさらに発展させ、心肥大が誘導される際、心筋細胞の細胞膜を構成する脂質二重層のグリセロリン脂質の脂肪酸が、「どこから供給されるのか(外因性か内因性か)」、「圧負荷病態下でその供給源が変化するのか」、「それらが障害された場合、心肥大形成・心不全進展にどのように関与するか」について、外因性脂肪酸取り込み障害マウス・内因性脂肪酸合成障害マウス・外因性脂肪酸取り込み障害+内因性脂肪酸合成障害マウスを用いて検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
外因性脂肪酸取り込み障害モデルとしてFABP4/5 DKOマウス、CD36 KOマウスを準備した(全身KOマウス)。内因性脂肪酸合成障害モデルとしてFASN KOマウス、Elovl6 KOマウスを用意した(タモキシフェン誘導性の心臓特異的cKOマウス)。両者の障害モデルとして、外因性取り込み障害モデルと内因性合成障害モデルを交配したマウスを作成した。2018年3月の段階で、交配は完了し、二重KOマウス、三重KOマウスが利用できるようになった。 これらのマウスの心臓を(a)負荷のない状態と(b)TACによる圧負荷を加えた状態で、心機能変化・形態変化・代謝変化・脂質二重層の組成変化について解析する。両者の障害モデルでは、負荷のない状態でも脂質二重膜の組成が大きく変化することで膜構造・膜機能や心機能に異常をきたし、圧負荷が加わると脂質二重層合成不全により心肥大形成が障害され、急速に心機能が悪化すると予想している。タモキシフェン投与6ケ月後のcFASN KOマウスおよびcElovl6 KOマウスでは、野生型マウスに比べて、心機能に明らかな違いは認められていない。外因性脂肪酸取り込み障害+内因性脂肪酸合成障害マウスの評価は現在進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
長鎖脂肪酸は、ATP産生のためのエネルギー基質として利用されるほか、脂質二重層(細胞膜、細胞内小器官)のグリセロリン脂質の主成分として利用される。今後の研究では、外因性脂肪酸取り込み障害モデルマウスと内因性脂肪酸合成障害モデルマウスを交配したマウスを用いて、 (a)負荷のない場合、(b)TACによる圧負荷を加えた場合、で、心機能・形態・代謝・脂質二重層の脂質組成にどのような変化がみられるか、を明らかにする。特に、細胞脂質二重層の主成分であるグリセロリン脂質の組成がどのように変化し、それが機能異常にどのように関与し、圧負荷に対する肥大応答にどのような変化がみられるか、に注目する。 <評価項目>生存率、心エコーによる経時的心機能評価、心重量、心肥大・線維化の組織学的評価、メタボローム解析、18F-FDG(グルコーストレーサー)/125I-BMIPP(脂肪酸トレーサー)を用いた取り込み実験、代謝・心肥大・線維化などに関する遺伝子群のタンパク発現・mRNA発現の変化、酸化ストレス・シグナル伝達の指標の発現変化を比較検討する。 上記に加えて、本研究で最も重要な脂質成分の解析を実施する。脂質二重層のグリセロリン脂質(PC/PS/PE/PIの各クラスのリン脂質およびそれぞれのリゾ体)の組成(特にsn-1位とsn-2位の脂肪酸組成)と細胞内のアシルCoA組成がどのように変化するかを中心に解析する。脂肪酸取り込み障害や脂肪酸合成障害があるとアシルCoAの組成変化が生じ、そのアシルCoの組成変化がそのまま脂質二重層のグリセロリン脂質の組成変化に関連すると予想している。
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