研究課題
心臓マクロファージを特異的に除去するため、マクロファージのプロモーター下にジフテリア毒素受容体を発現するマウスを準備し、肺動脈拘縮術による右心負荷モデルを解析した。ジフテリア毒素を投与しマクロファージを除去したマウスでは右心負荷により半数が数時間以内に死亡した。このとき心電図では房室ブロックによる徐脈を来していた。死亡後の心臓重量は、野生型マウスとマクロファージ除去マウスでは変化がなく、特に右心系の拡大は認められなかった。これらのデータより、マクロファージが除去されたマウスの右心負荷モデルでは、右心不全ではなく、不整脈による死亡が起きていることが示唆された。心臓マクロファージからの分泌蛋白の心筋におけるシグナル経路を検討した。ギャップ結合を構成するコネクシン43の複数のリン酸化修飾部位に対して変異を導入し、その遺伝子を含むプラスミドを培養細胞にトランスフェクションし、分泌蛋白によるリン酸化が消失するかを検討した。候補蛋白の添加により通常起こるリン酸化が消失する変異部位が複数同定され、分泌蛋白は複数の経路を介してギャップ結合の形成に寄与する可能性が示された。培養心筋の興奮伝播速度をライブセルイメージングにより解析した。心筋細胞はマクロファージと共培養することで著明に興奮伝播速度が上昇した。また、分泌蛋白の添加により、30分後には興奮伝播速度が上昇した。この効果は、分泌蛋白の受容体の他の種類のリガンドでは起こらなかったことから、この蛋白に特異的な作用であると考えられた。実際、他のリガンドにはコネクシン43のリン酸化作用はなく、この分泌蛋白のみリン酸化作用が認められた。以上から、心臓マクロファージにおいて同定した分泌蛋白は、心筋間の興奮伝導を促進する効果があり、短時間でその効果を発現し、受容体を同じにする他のリガンドでは見られない特異的な作用を有することが分かった。
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