AP2プロモーターを用いてヒトオメンチンが脂肪組織に過剰発現するトランスジェニック(OMT-Tg)マウスを作成。冠動脈を結紮し、心筋梗塞モデルを作成したところ、OMT-Tgマウスは、野生型(WT)マウスと比較して死亡率が有意に低かった。4週間後の心機能や血圧、臓器重量、組織学的変化等を評価したところ、WTマウスと比較してOMT-Tgマウスでは、梗塞サイズに有意差を認めなかったが、左室腔の拡大が抑制され、HW/BW及びLW/BWの上昇、血圧低下を抑制していた。WTマウスでみられる心筋梗塞後の左室収縮末期径および拡張末期経の増大、収縮能低下も、OMT-Tgマウスで抑制していた。また、心筋梗塞巣遠位部では、OMT-TgマウスはWTマウスと比較して心筋線維化が有意に減少しており、collagenⅠおよびⅢの発現も低下していた。WTマウスで見られる心筋梗塞巣境界域の毛細血管床の低下は、OMT-Tgマウス群で有意に抑制されており、心筋梗塞巣遠位部のWTマウスで見られる心筋サイズの増大も、OMT-Tgマウス群で抑制されていた。心肥大/心不全の指標であるANFやBNPの発現も減少していた。また、野生型マウスと比較してOMT-Tg群では、心筋梗塞巣遠位部のアポトーシスが抑制されていた。OMT-Tgマウスの心組織は、WTマウスと比較して心保護的に作用するシグナル伝達物質であるAMPKのリン酸化が亢進していた。以上から、オメンチンは、心筋梗塞後の病的リモデリングを抑制することが明らかとなった。最後に、オメンチンのバイオマーカーとしての役割を検討するため、糖尿病患者を対象に、SGLT2阻害薬治療開始前、治療開始6ヶ月後に、オメンチン血中濃度を測定した。オメンチン濃度は増加傾向を示したが、有意差は認めなかった(p=0.211)。
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