研究実績の概要 |
多機能タンパク質ナルディライジン(NRDC)の全身性遺伝子欠損マウス(Nrdc-/-)は、高度の徐脈を呈する。その原因は、If電流およびT型カルシウム電流の低下である。最終年度の今年度は、「NRDCが核 において、転写因子と複合体を形成し、HCN4をはじめとする洞房結節自動能に必須のイオンチャネルの遺伝子発現を制御する」という仮説のもと、以下の検討を行った。 (1)NRDCが洞房結節自動能に関わるイオンチャネルの遺伝子発現を制御するのか:NRDCと複合体を形成してこれらのイオンチャネルの発現を制御する転写因子の候補としてIsl1に着目し、NRDCとの相互作用について検討した。 (2)心房(洞房結節)特異的NRDC欠損マウス(Sln-NRDC-CKO)の心房(洞房結節)におけるHCN1/4,Cav3.1の遺伝子発現の低下を見出した。 (3)酵素活性欠失型変異NRDCノックインマウス(Nrdc E>A KI)の作製と解析:NRDCのプロテアーゼ活性が生体でどのような意義を持つのかを明らかにするために、Nrdc E>A KIを作製し解析を行った。Nrdc E>A KIホモマウスは生後1日齢(P1)では生存するが、2日齢以降には存在せず、死亡していることが明らかとなった。胎生期にサクリファイスしたところ、メンデルの法則通りに存在することから、E>A KIホモマウスはP1でなんらかの原因によって死亡することが示唆された。P1のマウスの心電図、体重、体温を測定したところ、Nrdc E>A KIホモマウスは野生型と比較して心拍数・体重・体温ともに低下している可能性が示唆された。原因を明らかにするため、P1マウスの心臓における遺伝子発現解析(RNA-seq)を行った。 (4)iPS細胞由来洞房結節モデルによるシミュレーションを行い、Nrdc-/-の表現型がシミュレーションによっても再現された。
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