研究課題
心臓は絶え間ない自律拍動により莫大なATPを産生し消費する。虚血心筋では、ATPの供給と需要のバランスが崩れ心不全発症の大きな要因となる。しかし虚血時において直接的にATP産生を増強して臓器保護を促すような治療法は未だ開発されていない。近年我々が同定したミトコンドリアATP産生を増強させる因子G0S2タンパク質はその寿命が短く、ユビキチンプロテアソームによって制御されていることを見出した。そのタンパク質寿命を延長させることによってATP産生の増強を可能にする創薬候補化合物の同定は虚血性心疾患の新たな治療法の開発につながると考え、G0S2タンパク質分解を抑制する薬剤の開発を目的とする。平成31年/令和元年度では、前年度に明らかにした低毒性ヒット化合物の心筋細胞におけるATP産生を評価したところ、セミインタクト細胞を用いた評価系および生細胞ATP濃度測定から、ヒット化合物がATP産生を上昇させることを見出した。またヒット化合物の添加により低酸素下における細胞生存率の有意な改善を認めた。これらの結果からG0S2タンパク質分解を阻害する化合物がATP産生の増強と細胞保護効果を有することが明らかとなった。さらに本化合物はG0S2タンパク質に直接的に結合することも明らかとなった。また化合物のG0S2への結合を見出す過程において新たなユビキチンリガーゼRNF126とその制御因子BAG6を同定し、G0S2タンパク質分解における生化学的メカニズムを明らかにした。これらの成果を論文にまとめJ.Biol.Chem誌に発表した。
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