研究課題
本研究は、ミオシン調節軽鎖キナーゼ(cMLCK)の活性制御機構の解明とcMLCKを標的とした心不全治療の有効性を評価することを目的とする。まず、力学的負荷刺激(伸展刺激と圧負荷刺激)によりcMLCKが活性化されミオシン調節軽鎖のリン酸化が増加することが確認した(生理学的制御機構)。また、cMLCKの欠損変異体を用いた検討にて、catalytic domainよりもN末端側は活性に必須ではないこと、C末端のregulatory domainは基質の認識にも関与することを確認した(分子学的制御機構)。さらにcalmodulinとcMLCKの共結晶構造解析に成功し、calmodulinによる活性化の機序を解明した(構造学的制御機構)。次にヒトの不全心におけるcMLCKとミオシン調節軽鎖脱リン酸化酵素(MLCP)の発現レベルを比較検討し、不全心においてはcMLCKと比較してMLCPの発現が例外なく増加していることが確認した。また、拡張型心筋症の患者においてcMLCKをコードするMYLK3遺伝子のexon 9のacceptor siteの1塩基変異によるframe-shift変異を同定した。この変異によりcatalytic domainが途中から欠損してキナーゼ活性が完全に消失した変異cMLCKとなることが確認できた。さらにCRISPR/Cas9システムを用いてこの変異を導入したノックインマウスを作製に着手した。また、cMLCK活性を制御する手段として、まずは活性を制御する擬天然ペプチドの開発を試みた。RaPIDシステムによりcMLCKに対して高いaffinityを持つ擬天然ペプチドを8種類同定し、そのうち2種類がcMLCK活性を阻害した。一方、cMLCKをコードするAAV9ベクターの作製に着手し、培養心筋細胞およびマウスの心臓にcMLCKを発現させることに成功した。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (2件) 図書 (2件)
FASEB J
巻: 34 ページ: 1859-1871
10.1096/fj.201800389R
FASEB J.
巻: 34 ページ: 2041-2054
10.1096/fj.201901686R
ESC Heart Fail
巻: 6 ページ: 406-415
10.1002/ehf2.12410
Circulation.
巻: 139 ページ: 2157-2169
10.1161/CIRCULATIONAHA.118.036761
Int J Cardiol Heart Vasc.
巻: 24 ページ: 100396
10.1016/j.ijcha.2019.100396.
J Biol Chem
巻: 294 ページ: 14562-14573
10.1074/jbc.RA119.008544
Int J Mol Sci.
巻: 21 ページ: E226
10.3390/ijms21010226.