研究課題/領域番号 |
17K09580
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
久留 一郎 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60211504)
|
研究分担者 |
白吉 安昭 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90249946)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | ヒトiPS細胞 / ペースメーカ幹細胞 / 刺激伝導系細胞 |
研究実績の概要 |
1) HCN4-GFP陽性細胞の経時的分取と分子生物学的特性の評価:HCN4-GFP搭載ヒトiPS細胞を分化誘導し、経時的にHCN4-GF細胞を採取し、その増殖能を測定した。誘導初期に採取したHCN4陽性細胞はTbx5を発現するFHF様の遺伝子発現が濃縮されている。一方でHCN4-GFP陰性細胞にはIsl1及びKDRを発現するSHFの細胞が濃縮されている。Ki-67で染色することで細胞分裂細胞数を検討するとiPS細胞由来心筋組織中のHCN4陽性細胞は増殖能を示し、幹細胞としての性質を有する細胞群の存在が判明した。2) HCN4とIsl1を可視化できるヒトiPS細胞株(HCN4-GFP/Islt1-mcherry hiPS細胞)の樹立:ヒトiPS細胞のIsl1遺伝子座にゲノム編集を用いてmcherry遺伝子の導入を試みたが、クローンを得ることが出来なかった。そこで、BACベクター上でIsl1遺伝子座にmcherryを相同遺伝子組み換えにより導入することを試みたが、クローンを得ることが出来なかった。3)HCN4-GFP陽性/Mlc2v-mcherry陰性細胞の分取と電気生理学ならびに分子生物学的特性の評価:分化誘導後にHCN4-GFP単独陽性細胞を複数のクローンから採取し、その電気生理学的特性の解析を行った。HCN4-単独陽性細胞は90%が洞結節型自動能を、10%が心室型自動能有していた。 3)HCN4-GFP/Mlc2v-mcherry二重陽性細胞の性質:HCN4-GFP/Mlc2v-mcherry二重陽性細胞はHCN4-GFP単独陽性細胞と異なりNa channelの活性が著しく大きく、かつ活動電位持続時間が長く、プルキンジェ線維細胞様特性と考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①HCN4とIsl1を可視化できるヒトiPS細胞株(HCN4-GFP/Islt1-mcherry hiPS細胞)の樹立に関してはIsl1の遺伝子座にmcherryを導入することを現在新たなguide RNAを用いることで進めている。②HCN4-GFP/Isl1-mcherry二重陽性細胞の分取と電気生理学ならびに分子生物学的特性の評価に関してはKi67を用いることで、分化誘導初期のHCN4-GFP陽性細胞にペースメーカを含む多分化能と増殖性を有する幹細胞様の細胞の存在を確認でき、さらにその細胞群は当初の予測とは異なり、Isl1を発現していないことが判明し、この点からペースメーカ幹細胞はHCN4-GFP陽性/Isl1-mcherry 陰性細胞分画に存在することが明らかとなった。この事実はHCN4-GFP/Isl1-mcherry搭載ヒトiPS細胞の樹立が本研究に必須ではないことを示しており、①で懸念された研究の遅れは回避できることが判明した。③HCN4-GFP陽性/Mlc2v-mcherry陰性細胞の分取と電気生理学ならびに分子生物学的特性の評価に関して、ヒトiPS細胞由来HCN4-GFP陽性/Mlc2v-mcherr2重陽性細胞がプルキンジェ線維細胞様の電気生理学的特性を有するために、新規刺激伝導系様細胞として特許出願した。④ヒトiPS細胞由来HCN4-GFP/Isl1-mcherry二重陽性細胞ならびにHCN4-GFP陽性/Mlc2v-mcherry陰性細胞のEx vivoでのペースメーカ機能評価のEx vivoでのペースメーカ機能評価に関してはヒトiPS細胞由来HCN4-GFP陽性細胞で代用できることが②で明らかとなったためにヒトiPS細胞由来HCN4-GFP陽性細胞を用いてパッチクランプ法により、ペースメーカ細胞であることを明らかとした。
|
今後の研究の推進方策 |
1)ヒトiPS細胞由来HCN4-GFP/Isl1-mcherry二重陽性細胞の増殖特性の検討を行うために、再度Isl1遺伝子座にmcherry をゲノム編集により導入することで本細胞の増殖特性を検討する。2)ヒトiPS細胞由来HCN4-GFP陽性/Mlc2v-mcherry陰性細胞の増殖特性の検討を行うために、現在ヒトiPS細胞由来HCN4-GFP陽性/Mlc2v-mcherry陰性細胞に加えて、ヒトiPS細胞由来HCN4-GFP陽性/Mlc2v-mcherry2重陽性細胞を採取し、その増殖特性を明らかにする必要がある。3)ヒトiPS細胞由来HCN4-GFP/Isl1-mcherry二重陽性細胞のEx vivo及びin vivoでのペースメーカ機能評価を行う事で、本細胞の増殖性とペースメーカ特性を明らかにする必要がある。4)ヒトiPS細胞由来HCN4-GFP陽性/Mlc2v-mcherry陰性細胞のEx vivo及びin vivoでのペースメーカ機能評価を行う事で、本細胞の増殖性とペースメーカ特性を明らかにする必要がある。H29年度の結果から、この細胞分画にペースメーカ幹細胞が存在する可能性があり、今後ヒトiPS細胞由来HCN4-GFP陽性/Mlc2v-mcherry陰性細胞の分画に関する検討が必要である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
少額の残高はあるが、計画通りに研究は進んでいる。
|