研究課題/領域番号 |
17K09582
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
井手 友美 九州大学, 医学研究院, 准教授 (90380625)
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研究分担者 |
池田 昌隆 九州大学, 医学研究院, 学術研究員 (10567382)
山田 健一 九州大学, 薬学研究院, 教授 (60346806)
筒井 裕之 九州大学, 医学研究院, 教授 (70264017)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 脂質ラジカル / ミトコンドリア / フェロトーシス / 心筋症 |
研究実績の概要 |
不全心筋では、ROSが増大し、ミトコンドリアはその主たる産生源である。脂質はミトコンドリア膜および核膜をはじめとし、細胞内に大量に存在する。脂質は、ひとたび酸化されると、持続的に脂質ラジカルを生成し、高い反応性で連鎖反応(連鎖的脂質過酸化反応:右図1)を引き起こし、その結果産生された脂質代謝物は蛋白質と複合体(脂質タンパク質複合体)を形成し、それらは新たな生理活性を有すると考えられる。 本研究においては、ミトコンドリア内で産生されたフリーラジカルによってミトコンドリアDNA (mtDNA) そのものの酸化障害により、脂質ラジカルが増加し、心機能障害を生じる、という仮説をたて、新たな心不全の病態メカニズムと治療法の解明を行うことを目的とした。 ミトコンドリアー核連関のシグナル伝達のメディエーターやその作用を明らかにするために、ドキソルビシン心筋症モデルを用いて実験をすすめている。 平成30年度は、心不全モデル動物を用いて脂質ラジカル消去剤による心機能への影響、さらには脂質ラジカルによって惹起されるフェロトーシスの関与および経路について明らかにした。 ドキソルビシン心筋症によるモデルマウスにおいて、脂質ラジカルによる脂質過酸化傷害について心機能への影響について明らかにした。またドキソルビシンを単離した仔ラット心筋細胞に暴露すると、容量依存性に細胞死を認めたが、脂質ラジカルの制御によりそれらの細胞死が抑制されることが明らかとなった。平成31年度は、これらの詳細な細胞内シグナル伝達を含めた機序および治療ターゲットについて明らかする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデル動物の作成、脂質ラジカル同定に必要なプローブの作成について、当初の予定通りである。 心不全モデルとして、in vivoにてドキソルビシンによる薬剤性心筋症モデルを確立し、本モデルにおいて脂質ラジカルが増加していること、脂質ラジカルをトリガーとして生じるフェロトーシスの関与について明らかにすることができた。また、生体内で脂質ラジカルの特異的消去酵素の発現によって脂質ラジカルのが制御されていることを明らかにすることができた。来年度は、脂質ラジカルの定性的定量的評価ならびに脂質ラジカルの細胞内局在と細胞内シグナル伝達の機序を明らかにすることで、不全心筋における脂質ラジカルの役割について明らかにする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
マウスを用いてその他の心筋症による心不全モデルでも、フェロトーシスが心筋収縮能にどのように関与しているかを明らかにする。その際に、フェロトーシス阻害剤であるフェロスタチン、新規に開発した脂質ラジカル消去剤を用いて、治療効果を明らかにする。研究を効率的に推進するために、 (1) 種々のマウスモデルにおいても、共通の病態基盤であるかどうかを明らかにする。 (2) 細胞死について、既知のアポトーシス、ネクローシスとどのような役割の違いがあるのか、明らかにする。 (3) 脂質ラジカルをターゲットとした治療の可能性について検討する。 上記を細胞実験、遺伝子改変動物を用いて効率的にすすめる。
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