研究課題
平滑筋特異的SOCSノックアウトマウスの表現系の解析平滑筋特異的SOCSノックアウトマウス(SOCS3-smKOマウス)は生後6ヶ月までは、野生型マウス(WTマウス)と比べ、外観や体重に差は明らかではない。しかし、生後6ヶ月以降はSOCS3-smKOマウスの体重はWTマウスに比べ、優位に低下していた。また、頭部や顔面の解剖学的な異常を認めた。これらの結果は、SOCS3-smKOマウスにおいて、加齢に伴う体重や構造の維持に平滑筋細胞のJAK-STAT経路の活性化とSOCS3による制御が重要であることを示している。心臓では生後3ヶ月より、SOCS3-smKOマウスにおいて、優位な心筋間質の線維化と心外膜の肥厚を認め、生後6ヶ月以降はそれらが顕著であることが明らかとなった。心エコーによる解析では、生後3ヶ月より、SOCS3-smKOマウスにおいて、拡張能の低下を認めるようになり、ある一定の割合で、生後6ヶ月以降に左心収縮能が低下する個体を認めた。全身CTを行うと、SOCS3-smKOマウスにおいて、心拡大や肺うっ血が観察され心不全になっていることが示唆された。リン酸化STAT3の免疫染色を行ったところ、生後3ヶ月より、SOCS3-smKOマウスにおいて、心筋間質の細胞や心外膜の細胞においてリン酸化STAT3が陽性となっていることが観察された。平滑筋特異的遺伝子欠損マウスにおける梗塞後心不全モデルの解析SOCS3-smKOマウスに左前下降枝結紮により梗塞後心不全モデルを作成したところ、WTマウスに比べ、SOCS3-smKOマウスは死亡率が高い傾向にあった。現在、AZAN染色、心エコーなどを行い、梗塞サイズや心機能評価を行っている。
2: おおむね順調に進展している
SOCS3-smKOマウスにおいて、心筋線維化や心外膜の肥厚などの組織学的な主要な表現系が明らかとなり、心エコーによる拡張能や収縮能など心機能評価でも表現系が明らかとなっている。また、どの細胞でSTAT3が活性化されているかについても免疫染色が実施できており、形態学的には血管細胞よりは県質の繊維芽細胞や心外膜の上皮様の細胞でSTAT3が活性化されるという興味深い知見も得られている。さらに、SOCS3-smKOマウスに梗塞後心不全モデルを作成することによって、死亡率が高いことが明らかとなり、血管平滑筋細胞のJAK-STAT/SOCS3系が虚血に対する心臓の防御機構において重要な役割を持っていることも示唆される所見が得られている。
SOCS3-smKOマウスにおける心肥大と心機能の評価をさらに進める。心臓と体重比、H&E染色や心エコーで心肥大を評価する。心エコーで心機能の評価を行い、ミラーカテーテルを用いた心内圧の測定も行い行い、心収縮能と拡張能を測定する。SOCS3-smKOマウスにおける炎症の評価を行う。マクロファージ(Iba1)やT細胞(CD4)、好中球(Ly6g)などの免疫染色と炎症性サイトカイン、ケモカインの発現をreal-time PCR arrayで評価する。心房心筋特異的遺伝子欠損マウスの作成する。サルコリピンCreノックインマウスとSOCS3-floxマウスとSTAT3-floxマウスをそれぞれ交配し、心房筋特異的SOCS3欠損マウス(SOCS3-slnKO)ととSTAT3 slnKOマウスを作成し、表現系を解析する。これにより、心房筋細胞におけるSTAT/SOCS3系の役割を明らかにしていく。
今年度は旅費の使用がなかったため来年度に繰り越した。
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J Am Heart Assoc
巻: 7 ページ: e007389
10.1161/JAHA.117.007389.