研究課題/領域番号 |
17K09587
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
安川 秀雄 久留米大学, 医学部, 准教授 (60289361)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心不全 / 心筋線維化 / 心外膜 / 血管平滑筋細胞 / サイトカイン / STAT3 / SOCS3 / 心筋梗塞 |
研究実績の概要 |
平滑筋特異的SOCSノックアウトマウスの表現系の解析 平滑筋特異的SOCSノックアウトマウス(SOCS3-smKOマウス)は生後6ヶ月までは、野生型マウス(WTマウス)と比べ、外観や体重に差は明らかではない。しかし、若年マウスにおいても、肉眼的に心外膜の肥厚が観察され、針を刺すときに表面の硬化が感じられ、実際には、早期に心外膜の肥厚が始まっていることが示唆されている。生後6ヶ月以降はSOCS3-smKOマウスの体重はWTマウスに比べ、優位に低下していた。また、頭部や顔面の解剖学的な異常を認めた。これらの結果は、SOCS3-smKOマウスにおいて、加齢に伴う体重や構造の維持に平滑筋細胞のJAK-STAT経路の活性化とSOCS3による制御が重要であることを示している。心臓では生後3ヶ月より、SOCS3-smKOマウスにおいて、優位な心筋間質の線維化と心外膜の肥厚を認め、生後6ヶ月以降はそれらが顕著であることが明らかとなった。心エコーによる解析では、生後6ヶ月より、SOCS3-smKOマウスにおいて、拡張能の低下を認めるようになり、ある一定の割合で、生後6ヶ月以降に左心収縮能が低下する個体を認めた。リン酸化STAT3の免疫染色を行ったところ、生後3ヶ月より、SOCS3-smKOマウスにおいて、心筋間質の細胞や心外膜の細胞においてリン酸化STAT3が陽性となっていることが観察された。HE染色では、心外膜に炎症細胞浸潤が観察され、心外膜炎の存在が示唆された。 平滑筋特異的遺伝子欠損マウスにおける梗塞後心不全モデルの解析 SOCS3-smKOマウスに左前下降枝結紮により梗塞後心不全モデルを作成したところ、WTマウスに比べ、SOCS3-smKOマウスは心筋梗塞発症24時間以内に優位に高い死亡率が観察された。心室頻拍や心室細動の有無について今後、テレメトリーを用いて評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
SOCS3-smKOマウスにおいて、心外膜側の心筋線維化や心外膜の肥厚などの組織学的な所見や、心エコーによる拡張能や収縮能など心機能評価でも表現系が明らかとなっている。また、どの細胞でSTAT3が活性化されているかについても免疫染色が実施できており、形態学的には血管細胞よりは間質の繊維芽細胞や心外膜の上皮様の細胞でSTAT3が活性化されるという興味深い知見も得られている。さらに、SOCS3-smKOマウスに梗塞後心不全モデルにおいて、心筋梗塞発症直後に致死性不整脈による死亡率が優位に高いことが認められ、血管平滑筋細胞のJAK-STAT/SOCS3系が虚血に対する致死性不整脈の発症に関与することが示唆されている。さらに、同マウスは心筋梗塞後の心破裂が起こらないことも観察されており、梗塞後の心破裂の病態解明につながる知見と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
SOCS3-smKOマウスにおける心肥大と心機能の評価をさらに進める。心臓と体重比、H&E染色や心エコーで心肥大を評価する。心エコーで心機能の評価を行い、ミラーカテーテルを用いた心内圧の測定も行い行い、心収縮能と拡張能を測定する。 SOCS3-smKOマウスにおける炎症の評価を行う。マクロファージ(Iba1)やT細胞(CD4)、好中球(Ly6g)などの免疫染色と炎症性サイトカイン、ケモカインの発現をreal-time PCR arrayで評価する。 繊維芽細胞特異的遺伝子欠損マウスの作成する。 ペリオスチンCreノックインマウスとSOCS3-floxマウスとSTAT3-floxマウスをそれぞれ交配し、繊維芽細胞特異的SOCS3欠損マウス(SOCS3-fibKO)とSTAT3-fibKOマウスを作成し、表現系を解析する。これにより、繊維芽細胞におけるSTAT/SOCS3系の役割を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度用いた、動物実験に必要な試薬、抗体や染色キットなどの消耗品は研究室で共有できるものや、前年度の残りで代用することができた。今年度得られた新しい知見として、致死性不整脈による突然死が得られている、次年度はこの不整脈関連の解析に用いる試薬やテレメトリーなどの器機の費用が必要である。次年度の使用額はこれらの不整脈の解析の器機や試薬に使用することを計画している。
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