研究課題
虚血性心疾患は、動脈硬化プラークの破綻を契機に発症する。従って、プラークの安定化は心血管イベントのリスク軽減に最も重要である。プラークの形成に重要なマクロファージは、細胞内コレステロールが過剰になると活性化され、プラークの脆弱化や破綻を来たす。そこで申請者は、コレステロールと結合するシクロデキストリン(βCD)の特性を活かし、細胞内コレステロールに直接作用して細胞外へと排出する超分子ポリロタキサン(PRX)を開発した。ポリロタキサンは、細胞内にエンドサイトーシスによって取り込まれ、エンドソームに局在してコレステロールをキレートし、細胞内コレステロールを低下させる特徴的な作用を示す。一方、マクロファージは炎症の慢性化に重要なで、動脈硬化においては脂質を溜め込んで泡沫化し、病態形成において中心的な役割を担う。そこで本研究では、マクロファージにおけるポリロタキサンの役割を明らかにし、ポリロタキサンの投与が、動脈硬化の形成に与える影響を検証することを目的として実施した。検討には、初代培養マクロファージを用いた。初代培養マクロファージにポリロタキサンを投与すると、細胞内のコレステロール量が低下し、Toll-like receptor(TLR)4を介した炎症応答と、活性化が強く抑制された。この分子機構について詳しい検討を進め、TLR4の細胞内シグナル伝達に必須のアダプター分子Myd88の機能がポリロタキサンによって抑制されることが明確となった。さらに、動脈硬化モデルマウス(Ldlr欠損マウス)にPRXを投与すると、動脈硬化の進展が有意に抑制されることを見いだした。これらの結果は、マクロファージの細胞内コレステロールを低下させることによって、動脈硬化の進展を抑制できる可能性を示唆する。
2: おおむね順調に進展している
動脈硬化モデルマウスを用いた検討も順調に推移し、ポリロタキサンの投与によって動脈硬化の進展が有意に抑制されるとの結果を得ることができた。現在、論文にまとめて投稿する準備を行っている。
細胞内コレステロールの低下が、マクロファージの細胞機能としての炎症応答と密接に連携することが明らかとなった。今後は、炎症応答の過程で、細胞内オルガネラのどの部位におけるコレステロールが変動するのか、細胞内の局在を明らかにしてゆきたい。
平成30年度中に、細胞内各オルガネラにおけるコレステロール量の測定を予定していた。しかし、実験条件の検討と最適化に予想以上の時間を要したため、平成31年度に行うよう、計画の変更が必要となった。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 4件、 招待講演 9件) 備考 (1件)
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