研究課題
虚血性心疾患は、動脈硬化プラークの破綻を契機に発症する。従って、プラークの安定化は心血管イベントのリスク軽減に最も重要である。プラークの形成に重要なマクロファージは、細胞内コレステロールが過剰になると活性化され、プラークの脆弱化や破綻を来たす。そこで申請者は、コレステロールと結合するシクロデキストリン(βCD)の特性を活かし、細胞内コレステロールに直接作用して細胞外へと排出する超分子ポリロタキサン(PRX)を開発した。ポリロタキサンは、細胞内にエンドサイトーシスによって取り込まれ、エンドソームに局在してコレステロールをキレートし、細胞内コレステロールを低下させる特徴的な作用を示す。そこで本研究では、ポリロタキサンがマクロファージの炎症応答をどのように変化させるか、また、ポリロタキサンを投与することによって、動脈硬化病変の形成が抑制できるかどうかを検討した。初代培養マクロファージにおいて、Toll-Like Receptor 4を活性化すると細胞内コレステロールが一過性に上昇した。ポリロタキサンは細胞内コレステロールを低下させ、TLR4を介した炎症応答と活性化を抑制した。さらに、動脈硬化モデルマウスにPRXを投与すると、動脈硬化の進展が有意に抑制されることを見いだした。これらの結果は、マクロファージの細胞内コレステロールを低下させることによって、マクロファージの機能を調節できること、さらには細胞内コレステロールが動脈硬化に対する新たな予防・治療標的として有用である可能性を示唆する。
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Int J Mol Sci
巻: 21 ページ: 3390
10.3390/ijms21030817
Front Cardiovasc Med
巻: in press ページ: in press
https://www.nms.ac.jp/college/schoolroom/kisoigaku/taisya-eiyougaku.html