研究課題/領域番号 |
17K09590
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
的場 哲哉 九州大学, 大学病院, 講師 (20448426)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ナノテクノロジー / 心筋梗塞 / 炎症 / 組織修復 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
本研究は、急性心筋梗塞病態(心筋虚血再灌流傷害および梗塞後心臓組織修復)において、単球・マクロファージを介した炎症およびその収束・修復の役割を明らかにし、この過程を制御するPPARγナノ医薬を開発することを目的とした。具体的には(1)心筋虚血再灌流傷害および梗塞後左室リモデリングにおける炎症の役割の解明、(2)PPARγナノ医薬による左室機能改善効果とメカニズムの解明、(3)PPARγナノ医薬による生命予後改善効果の検討、の3段階に分けて計画し、平成29年度の研究により(1)心筋梗塞後に組織障害性の炎症と組織修復性M2マクロファージの集簇が段階的に起こること、(2)PPARγナノ医薬が急性炎症を抑制するとともに、心臓組織におけるマクロファージM1/M2分化を組織修復性M2優位に制御すること、それとともに心筋梗塞後リモデリングを抑制することを示しつつある。引き続き研究計画を進めPPARγナノ医薬の急性心筋梗塞後の生命予後に対するインパクトを検証し、最終的にはナノ医薬のプラットフォームを硬固とするとともに急性炎症と組織修復の制御による新しい疾病治療コンセプトを示したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)心筋虚血再灌流傷害および梗塞後左室リモデリングにおける炎症の役割の解明 まず、虚血再灌流後の心臓に対してLy6Chigh炎症性単球が12時間後をピークに動員されることをフローサイトメトリーで示し、Ly6Chigh炎症性単球の主要なケモカインであるCCR2の欠損マウスでは、Ly6Chigh単球による急性炎症が抑制され虚血再灌流傷害による心筋梗塞サイズの拡大が約50%抑制されることを示した。冠動脈永久結紮心筋梗塞マウスモデルにおいても心筋梗塞後0, 3, 7日目の心臓組織においてフローサイトメトリーを行い、M1マクロファージは3日目から動員される一方、M2マクロファージが7日目から動員されることを示した。
2)PPARγナノ医薬による左室機能改善効果とメカニズムの解明 PPARγナノ医薬としてピオグリタゾン封入ナノ粒子(Pio-NP)を作成し、in vitroで骨髄由来単球をM2マクロファージへ分化させることを示した。マウス心筋虚血再灌流モデルにおいて、冠動脈再灌流時にPio-NPを静脈内投与し、再灌流24時間後の心臓組織におけるフローサイトメトリー、蛍光トモグラフィーにおける心臓の炎症のin vivoイメージング、および組織学的心筋梗塞サイズの検討を行った。Pio-NPは心臓組織に対するLy6Chigh炎症性単球の動員を抑制し、それに伴って心筋梗塞サイズを減少させることを示した。心筋梗塞モデルにおいて、心筋梗塞作成後3、7日目の心臓組織におけるフローサイトメトリーにより、Pio-NPが心臓組織におけるM1/M2分化をM2優位に誘導するとともに、心臓組織における炎症とMMP活性を抑制、梗塞瘢痕領域の縮小、菲薄化の抑制、残存心筋の繊維化の抑制、左室駆出率の改善することを示した。
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今後の研究の推進方策 |
3)PPARγナノ医薬による生命予後改善効果の検討 マウス心筋梗塞モデルにおいて、心筋梗塞作成手術から回復後に無作為化し、Pio-NPまたは溶媒を研究計画1)、2)により最適化された投与量、回数、間隔で投与する。マウスを継続飼育・観察し、死亡した場合は剖検により死因を同定する。総死亡および心臓死、心破裂に対するPio-NPの効果を検討する。これらの検討によりPPARγナノ医薬の急性心筋梗塞後の生命予後に対するインパクトを検証し、最終的にはナノ医薬のプラットフォームを硬固とするとともに急性炎症と組織修復の制御による新しい疾病治療コンセプトを示したい。
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